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【妄想昔話】 閉じ込められた白蛇と長屋の娘
昔々、南の平地に暮らす分限者の家があったそうな。
その分限者は、先祖から伝わる金銀財宝と土地を使うて、
自分の代でもどんどん金儲けをして家を大きくしていったそうな。
分限者はもっとお金が欲しゅうて、町に開いとる土地に新しゅう長屋を建てることにしたそうじゃ。
そうしたところ長屋を建てる空き地に、ちょろちょろーっと白い子蛇が草むらから出てきたそうな。
白蛇は神の使い、金運の兆しと、大工の棟梁もたいそう喜んだそうな。
ところがこの分限者、あまりよくない心根を持っとって、たいそう業突張り(ごうつくばり)じゃった。
家人にも誰にも告げず、誰もおらんようになってから、この白い子蛇を叩いて動けんようにしてしもうたそうな。
動かんようになった子蛇を壺に入れて、油紙と縄で壺ごと縛りあげてしもうた。
「やい白蛇、出してほしいんなら、儂(わし)の家がどんどん栄えるようにせえ。
金蔵いっぱいに金が貯まったら、この長屋壊して自由にしちゃろう。」
そう言うて、長屋の柱を置く礎石の下に封じたそうな。
真新しい長屋ができてからというもの、その白い子蛇のおかげか、
分限者は三国一の金持ちと呼ばれるほどの大金持ちとなったそうな。
金蔵にはうなるほどの金銀財宝が貯められたが、もうちっとで金蔵が満杯になると
また新しい金蔵を建てるので、いつまでたっても子蛇は自由にしてもらえなんだそうな。
月日が流れて、一組の夫婦者がこの長屋に越してきたそうな。
父は雇われの大工、母は着物の仕立てをして生計をたてておった。
この夫婦には一人の女童(めわらべ)がおってな、母の手伝いをようしておったそうな。
ちぃとばぁ不思議なところもあって、木のこずえで鳴く鳥と話したり、
川の土手で虫の囁きを聴くのが好きな娘じゃった。
越してきたその日、娘は長屋の土間から、か細い声がするのに気がついたそうな。
不思議なものの声を聴く娘でも、何を言うとるかわからんくらい小さな声じゃった。
それでも娘は声の主を探して、竈(かまど)の灰をのぞいみたがなんもおらん。
上がり框(かまち)の下をのぞいてもおらん。
しまいには親が仕事に出とるうちに畳をへぐってみても、ネズミ一匹おらん様子じゃった。
ある時、母親が炊いた飯をおにぎりにしておったとき、ちょろっと飯の塊を土間に落としてしもうた。
もったいなかったが、拾うてみても泥だらけのほこりまみれ。
土間の掃除は娘の役割だったので、あとで掃いてきれいにしようとおもうとったが、いつの間にか消えてしもうたそうな。
すると、か細い声がちぃとばぁ大きゅうなったそうな。
それに気づいた娘は、こそーっと飯粒や魚の切れ端を土間の隅に置くようにしてみたんじゃ。
目を離しとるあいだ置いた食べ物は無(の)うなっていき、声はようよう娘の耳にも聞こえるようになったと。
「娘さん、娘さん。聞いてくれんさい。
わたしは竈裏にある柱の下にいる白蛇じゃ。
この長屋を建てられたときに捕まって閉じ込められてしもうた。
力が無(の)うて出られもせず、ただただ、分限者の言う通り金を引き寄せたけど、
いつまでたっても金蔵は満杯にならんようすで、閉じ込められたままじゃ。
わたしはこれこの通り、ここから動くこともできんので、どうか代わりに分限者の金蔵を見てきてくれんさい。」
白蛇の憐れなか細い声に娘は承知し、次の日、母のお使いのついでに分限者の屋敷近くを歩いてみたんじゃ。
金蔵はすでに七つも建ち、八つ目の普請が始まっておるところじゃった。
その分限者は、先祖から伝わる金銀財宝と土地を使うて、
自分の代でもどんどん金儲けをして家を大きくしていったそうな。
分限者はもっとお金が欲しゅうて、町に開いとる土地に新しゅう長屋を建てることにしたそうじゃ。
そうしたところ長屋を建てる空き地に、ちょろちょろーっと白い子蛇が草むらから出てきたそうな。
白蛇は神の使い、金運の兆しと、大工の棟梁もたいそう喜んだそうな。
ところがこの分限者、あまりよくない心根を持っとって、たいそう業突張り(ごうつくばり)じゃった。
家人にも誰にも告げず、誰もおらんようになってから、この白い子蛇を叩いて動けんようにしてしもうたそうな。
動かんようになった子蛇を壺に入れて、油紙と縄で壺ごと縛りあげてしもうた。
「やい白蛇、出してほしいんなら、儂(わし)の家がどんどん栄えるようにせえ。
金蔵いっぱいに金が貯まったら、この長屋壊して自由にしちゃろう。」
そう言うて、長屋の柱を置く礎石の下に封じたそうな。
真新しい長屋ができてからというもの、その白い子蛇のおかげか、
分限者は三国一の金持ちと呼ばれるほどの大金持ちとなったそうな。
金蔵にはうなるほどの金銀財宝が貯められたが、もうちっとで金蔵が満杯になると
また新しい金蔵を建てるので、いつまでたっても子蛇は自由にしてもらえなんだそうな。
月日が流れて、一組の夫婦者がこの長屋に越してきたそうな。
父は雇われの大工、母は着物の仕立てをして生計をたてておった。
この夫婦には一人の女童(めわらべ)がおってな、母の手伝いをようしておったそうな。
ちぃとばぁ不思議なところもあって、木のこずえで鳴く鳥と話したり、
川の土手で虫の囁きを聴くのが好きな娘じゃった。
越してきたその日、娘は長屋の土間から、か細い声がするのに気がついたそうな。
不思議なものの声を聴く娘でも、何を言うとるかわからんくらい小さな声じゃった。
それでも娘は声の主を探して、竈(かまど)の灰をのぞいみたがなんもおらん。
上がり框(かまち)の下をのぞいてもおらん。
しまいには親が仕事に出とるうちに畳をへぐってみても、ネズミ一匹おらん様子じゃった。
ある時、母親が炊いた飯をおにぎりにしておったとき、ちょろっと飯の塊を土間に落としてしもうた。
もったいなかったが、拾うてみても泥だらけのほこりまみれ。
土間の掃除は娘の役割だったので、あとで掃いてきれいにしようとおもうとったが、いつの間にか消えてしもうたそうな。
すると、か細い声がちぃとばぁ大きゅうなったそうな。
それに気づいた娘は、こそーっと飯粒や魚の切れ端を土間の隅に置くようにしてみたんじゃ。
目を離しとるあいだ置いた食べ物は無(の)うなっていき、声はようよう娘の耳にも聞こえるようになったと。
「娘さん、娘さん。聞いてくれんさい。
わたしは竈裏にある柱の下にいる白蛇じゃ。
この長屋を建てられたときに捕まって閉じ込められてしもうた。
力が無(の)うて出られもせず、ただただ、分限者の言う通り金を引き寄せたけど、
いつまでたっても金蔵は満杯にならんようすで、閉じ込められたままじゃ。
わたしはこれこの通り、ここから動くこともできんので、どうか代わりに分限者の金蔵を見てきてくれんさい。」
白蛇の憐れなか細い声に娘は承知し、次の日、母のお使いのついでに分限者の屋敷近くを歩いてみたんじゃ。
金蔵はすでに七つも建ち、八つ目の普請が始まっておるところじゃった。
更新日:2017-03-29 00:41:55