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Soul mate

お題:混沌の映画 制限時間:30分 読者:415 人 文字数:1413字

■Soul mate

そうだ、お前が出たあの映画。
俺はあれを見て、なんだかすごく、切なくなった。
お前らしいとはいえ、お前らしさがない気もして。
その目だけが、印象に残った。

ただ、そうは言えないから、すごくよかったよって。
最初の「ヒョン」だけでちょっと萌えたなー、とか。
言ったら「ふぅ~ん」って白い目で見られたけど。
まあ・・・しょうがないじゃん、それはさ。

お前の孤独な姿も。
役柄上の、シンプルな服装も。
タオルでさんかくきん? みたいにしてるあの豆腐屋姿も。
もーもたろさん、ももたろさん。
ひとる、わたしにくーださいよー。も。
くださいな、じゃないのかとか、違和感を感じながらも、やっぱり。
可愛くて。

女装姿だって。可愛かったけど。
可愛かったけどなんか、いや、脱がしたほうが。
いやまて・・・あの髪型、昔あんなだったぞ、とかさ。
勝手に、あいつのあんな姿ずっと前から知ってるって。
思いながら見てて。
泣きそうになった。

あの映画の中にすべてのお前の過去が。
もちろん、役柄上のものでしか、ないけど。
詰まってた、気がする。その孤独も、疾走感も何もかも。
甘さも、熱さも・・・切なさも。

好きだと。
あらためて思った。
俺の隣にいなくても、お前はやっていけるな。
あんなに、作品の中ではあんなに暗い星なのに、お前の存在は輝いていたから。

話の筋が入ってこなかった。
感傷に浸る余韻がなかった。
俺が、死ぬとか。そうつぶやくお前に。
抱きしめてあげたくなるほどの心の近さが、ほしかったのに。

現実ってきっとあんなもんなんだろうな。
目で語る余裕もないまま、流されてく。
俺は出来ることならそばでお前を抱きしめていたいよ。
言葉では伝えられなくても。
そばにいる。その距離感は、ぬくもりは、すべてを超越するから。

ねえ、ヒョン。・・・ん?
あの映画、さ。・・・うん。
かなり、つらかった。・・・わかるよ。
自分の中に、別の部屋ができたみたい、だった。・・・うん。

今の俺と、あの役をやってる、俺。
あの役をやっている俺は、一切光の当たらない世界に、いてさ。
その混沌の中で、光を探すんだ。
いつも当ててもらっている、光は。
俺にとって、なんなのかな。

お前は俺を見る。俺の目の奥の翳りまで、見透かすような目で。
そして、笑う。いろいろあったな、俺たち。
お前がいてくれて、本当によかった。
お前じゃなきゃ。

またあの光の中に、戻ってこられなかったよ。

見つめ合う。指を、つなぐ。
なに? 照れくさそうな、微笑みは。
あの映画の中の、幸せそうな、お前とオーバーラップする。

幸せは、さ。
心が決めるものなんだ。
俺が、俺の意思で幸せだと思えば、幸せで。
不幸だと思えば、不幸。どんな幸せの中にいたって。

で、俺はやっぱりお前さえいれば幸せで。
お前は・・・どうか、わからないけど。

同じ思いであることを、祈る。あの、教会で。
愛する者のぬくもりを感じながら、冷たくなっていったお前を。
思い出しながら。

いつでも、俺がそばにいてやる。
いつでも、俺が。

もし、そばにいられなくても。
必ず、心は、お前のそばに。

この限りない宇宙の中で、混沌とした世界にいて。
ただひとり出会えた、同じ魂。

お前の手を、離さないよ。

この命が、尽きる日まで。
この命が尽きても、お前への愛は、永遠に。


更新日:2017-01-14 10:04:36

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