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第5話

 教室に集まった人数を見て、武は見慣れた物だと安心していた。
 新学期が始まって三週間が経過し、バドミントン部に入る新入部員達も絞られていく。武達の活躍によって例年よりも入部人数は多かったが、最終的には例年通りの人数に落ち着いているようだった。
 既に頭角を現しかけている遊佐を含めて六人。自分や一つ下の学年も同じくらいの人数のため試合に出る機会もあるだろうと思う。
 この集まりの為に借りた教室には男子のみ。女子は一年の人数がまだ多いために別の広い特別教室を借りていた。

「これで全員かな」

 教卓の前に立つ吉田は教師のように全員を見回す。武は特に意図なく最前列の窓際に座っていたため教室全てを見渡せる位置にいた。今日は休むという連絡も入っておらず、欠けている部員もいない。
 会議の準備が整ったと判断した吉田はチョークを持って黒板に書き始める。

「今日は一か月後のインターミドルの話をするのと一緒に、今の市内のパワーバランスについて確認しておくことが目的だ」

 吉田はそう言う間に黒板に四つの枠を描いていた。

 浅葉中。明光中。翠山中。清華中。

 四つの名前と四角を描いた後で、浅葉中のところに名前を書いていく。
 吉田と武の他には橋本と林、竹内と田野。杉田。
 五人の名前が書かれたところで一度手を止めると、チョークを離した。

「今時点で、他校に実力者として認識されているのはこの三組と一人。特に俺と武。そして、杉田だ」

 説明しているのはこの場にいる一年生に対してという意味合いが強い。二年と三年は一年を通して自分の現状を知っている。自分の名前が出ることが恥ずかしかったが、武は不意に二年生の雰囲気が少し変わったのを感じ取る。

(……あえて現状を確認させて尻を叩く効果もあるってことかな)

 ダブルスの吉田・相沢組。シングルスの杉田は浅葉中の主力と言っていい。そしてもう少し素直に言ってしまえば、自分達以外は浅葉中はさほど脅威とは感じられていなかった。
 それは武と吉田二人とそれ以外の部員の実力差がはっきりしすぎていることも要因の一つ。と言っても、他の学校も同じような状態で、学校内ではほぼ一強という状態。
 各学校のトップレベルの選手がそのまま全地区大会への代表としてスライドする。その中から更に選別されて全道に行くとすればもっと狭くなる。

「次に明光中。ここはダブルスの安西と岩代。川瀬と須永。シングルスはあまり強くないけど、今なら二組のダブルスはウチだと俺と武しか勝つ可能性は高くない。だから、団体戦だとここが一番の強敵になると思う」

 口にした名前をチョークで書き込み、丸でダブルスの単位で囲む。そこから少し横道にそれるように団体戦の説明が始まった。

「団体戦は二複一単……ダブルス二組とシングルス一組。先に二回勝った方が勝つルールだ。明光中はダブルス二つで勝ち、あわよくばシングルスっていう勝利を狙える。それがいいか悪いかは別にして、やっぱり脅威だな」
「……こっちの第二ダブルスがどのペアになるかってことだな」

 教卓の真正面に座っていた杉田が一言差し込み、吉田は静かにうなずいた。

更新日:2018-02-27 22:52:33

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