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ようこそ、閉ざされた世界へ

新一が哀を連れてきたかった場所とはいったいどこなのか────。

「とっても素敵ね。氷の結晶がキラキラと輝いているわ」
「ああ、今しか見られないんだぜ。それに今日は満月だしよ」

月がまん丸の顔を覗かせれば、空に散りばめられた無数の星たちも喜び光る冬の夜。

「せっかくだから外へ出てみるか」と新一に誘われて、
哀もワンボックスカーから外へと足を踏み出した。

今夜は晴れているとは言え、外は氷点下の世界。
思わず震えそうになる哀の身体を新一が背中から抱きしめる。

背中に暖かいぬくもりを感じながら哀は目の前の光景に息を飲んだ。

そこはまるでおとぎの国のような『蒼の世界』が広がっていた。
氷のつららで覆われた滝つぼが青く輝いている。

白い雪山、凍った滝、夜の暗闇、満月の月明り──。

それらのすべての条件が一つに重なり合って、
氷と雪の結晶が薄らと青白い光を放ち、幻想的な世界を作り出していたのだ。

言葉も絶するほどの美しい世界に、「きれい」と哀がひと言呟けば、
「だろう。オメーにこれを見せてやりたかったんだ」と新一が得意げに笑う。


新一の笑い声に哀は体を振り向かせ、彼のブルーの瞳を見つめた。
彼の瞳も目の前の光景に負けないくらいの蒼く澄んだ色。

でも、哀は彼の瞳が曇った日々を知っている。

それは愛する人を失ったせい。

彼女の思い出と言えば、お姉ちゃんに似た長い黒髪。
彼女とは三年近くも会っていない。
今はもう顔もおぼろげだ。

それなのに────

他の女に本気で妬いたりなんかしないけど、彼女だけは今でも哀に嫉妬心を抱かせる。
新一が心から愛した人だから……。

更新日:2017-05-30 21:07:31

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秘密のふたり シリーズ2 【コナンで新一×哀】