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mew~kittenな二人

挿絵 203*293



「ニャンだ・・・せっかく加勢したのに、キス止まりか?しかも家まで送り届けたのにもかかわらずなぜ押し倒さん!」

「ニャンニャン、落ち着いてくださいませ候・・・仕方ありません、汽車の時間が迫っておりましたので今回は・・・しかし彼らにしては、一気の急展開でございましたニャン。さすが侯、このようなお姿となられても機敏な動きと素晴らしい機転、冴え渡っていらっしゃいました」

「うむ、あれの幸せのためならニャンとでも・・・少々荒技を用いたがあのままではおそらくユリウスは酔って寝たまま、あやつも眠ったアレに胸の内を吐露するぐらいのことでベッドに寝かしつけ、せいぜい額への口づけで帰って行ったに違いないからな。あの看病で機は熟していた、あそこはあと一押しの賭けに出ないとな。それにしてもこの姿、なかなか気に入った。久しぶりのあれの太腿の感触も味わえたしな・・・相変わらずほっそりとしなやかで、甘い匂いも懐かしかったニャン・・・」

「それはようございました・・・しかし今回下界に降りて来たのでパワーをかなり使ってしまいました。またしばらく使えませんニャ」

「わかっておる。それだけの効果はあったからよい。フ・・・単純なあやつのことだ、こうなればもう盛り上がる一方であろう。戻るニャン」

「ニャン!」

「・・・おまえもそのシルバーグレーの毛並み、なかなか板についておる」

「ニャニャン!」

――ゴロゴロゴロ・・・
――こ、こら!調子に乗って纏わりつくでない!
――ミュ~・・・

ユリウス様の熱発騒動の翌々日、奴と二人きりで祭り見物に出かけることをグラスで確認した我らは、急ぎ「天国パワー」の特別申請に出向きなんとか了承を得た。
あの二人が結ばれることはレオーン様の願いでもあり、ここでは子供の願いに絡むことには上はかなり寛大だ。
特に子を成して親となっていた者は、人類の繁栄に貢献したということで更に優遇される。
しかし、そのパワーがどのような形で授けられるのかはその時にならないとわからない。
とにかく今回、気が付いたら我ら二人は愛らしい子猫の姿で夕焼けに染まる下町の石畳に立っていた。
戸惑う私をよそに、黒猫のお姿となられた侯はすぐさま機敏に走り回られあたりの状況を掌握、奴とユリウス様の様子も確認しに向かわれた。
一通り探索し終えた侯は、必死に付き従っていた私にいくつかの状況を想定したそれぞれのプランを説明して下さった。

そしてヤツにおぶられたユリウス様が現れ・・・。

今回のことは結果的に奏功したが実は一番単純そうでいて加減が難しく負傷のリスクも伴う策で、当然二人をいかにイイ感じにもって行けるかどうかは我らの手腕にかかっていた。
このパワーを持ってしても、人の心というものの操作は我らにも不可能だから・・・。
因みに・・・ポイントは言うまでもなくキトゥンならではの愛らしさ。
侯には、ユリウス様の近くではその目ヂカラを緩めていただくよう進言していたのだが、ここぞとばかりにすり寄っておられたな・・・。

しかし侯の仰る通り、機は熟していたのだろう。
少女のように無邪気なユリウス様の笑顔が、やつの口づけで艶やかに女のそれに変化したときの侯の表情・・・子猫のマスクといえど私にはわかった。
ユリウス様へのなお一層の愛おしさと、彼女の幸せを純粋に喜ばれ心からの安堵が表れた安らぎのお顔、満ち足りた微笑み・・・そしてユリウス様からやつに口づけるご様子を、身じろぎもせずただじっと見つめられていた・・・。

―ああ、侯・・・

嫉妬という邪心も命と共に消え去った我らですが・・・その背中が夕闇に淋しげに浮かんだ気がしたのは、三日月から届く頼りない光のせいだったのでしょうか。
侯・・・わたくしは、いつもあなたのお傍に・・・。




更新日:2017-11-15 09:36:24

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スパイロス君のボリシェビキ的日常と憂鬱{オルフェウスの窓}