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小説

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蜜月 ~ハネムーン~

ロシアの夏は白夜の季節。
沈まぬ太陽のせいで、アレクセイたちの活動はどうしても制限される。
そうなると、必然的にアレクセイの帰宅は早い。
一緒に暮らし始めて、最初の白夜の季節。

毎日に家事にも慣れ、友人と呼べる人たちもできた。
ユリウスのとって、この毎日が当たり前になりつつあった。

最近、アレクセイの帰宅が早くなり、ほぼ毎日のように帰ってきてくれる。

「この白夜の季節は厄介なんだ」

確か、そんなことを言っていたと思う。
初めは何のことかよくわからなかったが、彼たちの活動がしにくいようだと、同志の奥さん連中と集まったときその話が出た。

ユリウスにとっては、アレクセイと一緒にいられる時間が増えるだけで満足していた。

さて、今日の夕飯は何にしようか、モップを掛けながら思案している。

勢いよく玄関の扉が開いた。

「ユリウス!すぐに出かけるぞ!」

開いたとたんにアレクセイの言葉。
息を切らせて入ってきた。

「ど、どうしたの?」
「泊りがけの用意をしろ。時間がないんだ。家事なんぞ放っていたらいい」
「え?!掃除の途中だよ」

ユリウスの言葉も聞かず、アレクセイは旅行用のカバンに衣類を詰め込んでいる。
当局の捜索がここまで及んできたときには、夜逃げ同然でアパートを引き払うことをアレクセイから聞かされていた。
そのために最低限の荷造りはしてある。
家財道具は極力少なくし、余分なものを家に置かない。いつでも出ることができるように準備は整えたあった。

切迫した事態だと判断したユリウスは手際よく衣類をカバンに詰めた。

「行くぞ」

コートを羽織り、アレクセイに続いて家を出た。

更新日:2016-11-14 21:39:31