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小説

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黄昏

挿絵 304*305

”アレクセイ・ミハイロフが生きていました。どのようにしてシベリアから生還したか、現在捜査中です”

ボリシェビキに潜入させたロストフスキーからの定時報告に愕然とした。
シベリアのアカゥト監獄が火災で全焼し、収監されていた囚人全員と一部の看守が死亡したと、報告を受けていた。

アレクセイ・ミハイロフを追ってロシアまで来たユリウスだったが、不慮の事故でそれまでの記憶すべてを無くし、この家で監視をしつつ留め置いていた。
そして7年の歳月が流れ、彼の死亡が報告された。

彼女がロシアにとどまる理由がなくなり、ロシアとドイツとの国交が怪しくなる前に帰す決心をした。

初めは、男一人のために命がけで追うなど愚かなことだ蔑んだ。
彼女がアーレンスマイヤ家の跡取りだということもあり、監視する必要があったが、記憶を無くした彼女は、不安からレオニードにすがり、庇護を求めてくる。いつしか、そんな彼女を愛するようになった。

”ユリウス様がアレクセイ・ミハイロフと共にいます。すでに、同志たちには妻として紹介し、党の中央委員会にも結婚の報告をしております”

一途に一人の男を想い、ひたむきに生きるユリウスを羨ましく思ったこともある。自分には決してできない生き方だからだ。
記憶を無くしても、彼女の心にはあの男がいる。どんなに自分にすがってきても、それは保護も求める子どもと同じだ。
それでも惹かれた。

それが・・・・
結婚?妻だと?

ロストフスキーからの報告書を握りしめた。
クシャリと音を立てて、ひしゃげた紙がレオニードの手からこぼれた。


更新日:2016-11-04 23:22:48