• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 10 / 84 ページ

朋友

ペテルブルグ郊外にある共同墓地。
スズランの花束を胸に抱いて歩をゆっくりと進める。
ここに来るのは二度目。
最初に来た時には、まだ雪が残っていた。

共同墓地の片隅にあるこじんまりとした墓石の前で歩みを止めた。

「こんにちは、ガリーナ」

友の名を呼びながらしゃがむと、花束にキスをして手向けた。

「あのね、アレクセイと結婚の誓いを立てたんだ。立会人も指輪もドレスもないけど、アレクセイはこれからは夫婦だって。ずっと離れないってお互いに誓い合ったよ。君たちのような夫婦になれるかな。
ガリーナが教えてくれたこと、忘れないからね」

目の前に友人がいるかのように語りかけるユリウスがいた。

忘れようとしても忘れることなどできない。
あの日の友の悲惨な姿。
自分を守るために、わが身とお腹に宿った小さな命と共に血だまりの中で息絶えていった。

更新日:2016-10-25 23:58:01