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鳶色

挿絵 300*202

ペテルブルクに冬将軍の到来を告げる季節になってきた。

アレクセイと一緒になって半年余り。あの屋敷を出てから初めての冬を迎える。

夜半、玄関の扉を叩く音に緊張が走る。アレクセイは今夜も帰ってきそうになかったから、ベッドに入ったばかりだった。
ガウンを羽織り玄関に近づく。アレクセイなら、ノックなどしない。
同志が訪問した時の合図も熟知している。
今のはそれとは明らかに違っていた。
躊躇っているうちに扉の向こうから声が聞こえた。

「ユリウス、開けてくれ!」

聞き覚えのあるズボフスキーの声だった。
慌てて扉を開けると、ズボフスキーに抱えられた夫の姿が飛び込んできた。

「アレクセイ?!」
「とにかく、横にさせてくれないか」

大の男を抱え、さすがのズボフスキーも息が荒い。とりあえず、彼をソファに横にしてもらった。
横たえたアレクセイはうめき声をあげる。

「アレクセイ、アレクセイ・・・」

額にかかった髪を撫で上げながら、彼の全身に視線を向けた。
右腕のコートに血が滲んでいた。

「これは・・・」

連れてきてくれたズボフスキーが説明をする。

更新日:2017-02-09 08:37:52

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