官能小説

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よんじゅうなな☆

夕焼けの茜色が徐々に薄れ、空が濃い闇色に包まれようとするこの時間、
この街では徐々に明かりが灯り、昼間の閑散とした様子とは違い、あちこちで店は開店し、次第に人々が通りに姿を見せ始める。

ここ娼婦街は夜の今こそが活気に満ち溢れる時間なのだ。

商品を売る店主、体格の良い目付きの鋭い男、派手な色彩で肌を露出する服を纏う女、そして呼び込みをする男達と女(たまに男)目当ての客…。
様々な人が街を彷徨いているそんな中、ひとりの若い男が歩いていた。

「よう、そこの兄ちゃん!良い女が居るぜ。ちょっと遊んでいかないかい?」

ひとつの娼館の前で客引きをしていた別の若い男がその男に声をかけてきた。

「……」

若い男は僅かに表情を歪めたものの、客引きの男を無視して前を通り過ぎようとしたが、いきなり男から腕をつかまれてしまった。

「おいおい色男、そんな我慢するなよ、安くしとくからさあ」

にやにやする客引きの男に捕まった若い男は、不快感も露にその男を睨み返した。

「おいおい、怖い顔すんなよ、ん?ここに来るくらいだから女目当て…」

そこまで言った男が若い男の首筋に目を向けた途端、みるみるうちに表情を歪ませた。

「あ、あんた、まさか…!?」

先程とはうって変わって、にやけ顔から恐怖とも言える表情に変えて男は若い男から手を離し、後ずさった。

「わ、悪ぃな。あんたが…とは知らなかったんだよ。じ、じゃあな!」

それだけ告げると男は逃げるように踵を返して娼館の奥へと入っていった。

「……」

…ここいらで僕の顔を知らないとは新人かモグリか?ったく…

若い男が忌々しくそう思いながらも先に行こうとすると、

「あら、レイスじゃないの!どうしてこんな所に要るの?仕事はお休み?」

今度は別の娼館の前にいた派手な格好の女に声を掛けられてしまった。

…ちっ、また面倒な女に引っ掛かってしまったか。

「ああ、久しぶりに休みを貰ったからちょっと買い物にな」

心の中ではそう思いながらも表面では笑みを浮かべ、さらりと答える。

「えー、買い物だけじゃなくてちょっとあたしと遊んでいかなーい?ね、あたし今月稼ぎが足りないのよ、協力してよ」

女は甘えるように若い男…レイスの首に腕を絡ませた。

「悪いな、休みの時はセックスはしないよ。僕もたまには身体を休めないとね、商売道具の『男』が役に立たなくなったら困るしね」

だがレイスはやんわりと女の腕をほどいて、さっさと先へと歩き出した。

「もうっ、折角の良い男が台無しよっ!」

背後から聞こえる女の罵倒を無視して、レイスは商店の連なる場所まで辿り着いた。
そこで目的であった雑貨品の幾つかを買い揃えていく。

「ありがとよっ!」

礼を述べる店主に軽く手を振り、レイスは購入した荷物を手に店を出ていった。

店を出てからも数人の娼婦に声を掛けられたが、さらりとかわして帰路を急ぐ。

と、何気無く目にしたその光景にレイスは足を止めた。

…あれは?

それは小さな小屋…従来であれば用具などを入れておく物置小屋なのだが、今は性質(たち)の悪い誘人(スカウター)の溜まり場となっており、彼等に引っ掛かった憐れな女(稀に男)が違法に彼等に『調教』され売られていると噂されている場所であった。
それ故話を知る者は皆、その小屋に近付く事は無かった。

更新日:2017-04-08 06:21:46

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