- 35 / 208 ページ
信じたく、無かった。
隠れて聞いたマリウスの会話も目の前の光景もリーンの話も、何もかも信じられなくて、そして忘れたくて…。
フローラの頭の中では今までの事、目の前で起こった事、そしてリーンが話した全ての真実がごちゃ混ぜになって彼女の精神と気持ちを押し潰していた。
「…私、は、どうなるの…?」
無意識のうちに呟いたその一言に、タルシーが答える。
「事が終わるまでは今までの通り、マリウスの妻を演じて貰うよ。勿論君には見張りを付けさせてね。そして…事が終わればマリウスとは離縁し、ブランディア家とは一切の関係を断って貰う」
「!?」
「無論ただでとは言わない。当然それなりの役目を果たした報酬と慰謝料を君には渡すつもりだ」
「嫌だって、言ったら?」
「その答えは君にも解るだろう?よもやそこまで空気を読めない程、愚かではあるまい」
「……」
リーン同様、やはり淡々と答えるタルシーに、それ以上フローラは口を開く事は出来無かった。
…どうして、どうしてこうなるの?
私はただ…ただ私を一番に愛してくれて、私が一番愛する人と一緒に、ささやかでも幸せに暮らしたかっただけ。
いろんな事があったけどやっと、やっとそんな人に、マリウスに出逢えて、周りから何と言われようとも、幸せに、暮らしていた、筈なのに…。
ふとフローラはちらりとマリウスに視線を向けた。
一方のマリウスのほうは無表情のまま、冷たい瞳を宙に漂わせていたが、彼女の視線に気付くとふと目を合わせ、微かに表情を歪めた。
…そうよ。周りの人達はあんな事を言っているけど、未だマリウス自身の気持ちは聞いていない!彼自身から、直接私に対する気持ちを聞いていない!
「マリウス…」
今までの事実を否定したくて、僅かな希望を抱いてフローラは椅子から立ち上がると、ふらふらとした足取りでマリウスの傍まで近付いた。
「マリウス…ねえ教えて、貴方の、気持ち。私のことを、どう思っているのか、貴方自身から、私に、聞かせて…」
一言一言、絞り出すようにやっとそれだけ言葉に紡ぎ出せた。
僅かな希望の糸に縋るように、期待の込めた瞳を向けて。
…お願いマリウス!さっきの言葉は違うと言って!始末して欲しいとか何とか、そんな事なんて嘘だと言って!
そして、そして今でも私を好きだと言って!
そうでないと、私は、私は…!?
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、マリウスはふんと鼻を鳴らし、さも小馬鹿にするように冷たく彼女を見下すのだった。
「どう思っているか、って?決まっているじゃないか、僕は君の事なんて何とも思っていない。君は僕達の復讐の為の道具、単なる人形にしか過ぎないんだよ」
「!?」
次の瞬間、マリウスの唇から発せられた無機質な声に、非情な言葉にフローラは愕然とした。
「そ、んな…だってマリウス、あの時ポートミルの別荘で言ってくれたじゃない!私のことを好きだって、今の私を一番愛しているって!」
先程の言葉が信じられないと言わんばかりに必死の様相で、震える声でそう叫ぶ。
「ああ、確かそんな事を言ったかもしれないね。君を騙す為の嘘の言葉を、嘘の愛の告白をね」
「!?」
だがマリウスのほうは錯乱気味のフローラの言葉にもあくまで淡々と答えるだけである。
「君のような知識も教養も無く愚かで頭の足りない、しかも簡単に男達に脚を開く浅ましい娼婦などに、僕が本気で好きになるとでも、本気で愛するとでも思ったのかい?」
「マリウス、言い過ぎだぞ」
隠れて聞いたマリウスの会話も目の前の光景もリーンの話も、何もかも信じられなくて、そして忘れたくて…。
フローラの頭の中では今までの事、目の前で起こった事、そしてリーンが話した全ての真実がごちゃ混ぜになって彼女の精神と気持ちを押し潰していた。
「…私、は、どうなるの…?」
無意識のうちに呟いたその一言に、タルシーが答える。
「事が終わるまでは今までの通り、マリウスの妻を演じて貰うよ。勿論君には見張りを付けさせてね。そして…事が終わればマリウスとは離縁し、ブランディア家とは一切の関係を断って貰う」
「!?」
「無論ただでとは言わない。当然それなりの役目を果たした報酬と慰謝料を君には渡すつもりだ」
「嫌だって、言ったら?」
「その答えは君にも解るだろう?よもやそこまで空気を読めない程、愚かではあるまい」
「……」
リーン同様、やはり淡々と答えるタルシーに、それ以上フローラは口を開く事は出来無かった。
…どうして、どうしてこうなるの?
私はただ…ただ私を一番に愛してくれて、私が一番愛する人と一緒に、ささやかでも幸せに暮らしたかっただけ。
いろんな事があったけどやっと、やっとそんな人に、マリウスに出逢えて、周りから何と言われようとも、幸せに、暮らしていた、筈なのに…。
ふとフローラはちらりとマリウスに視線を向けた。
一方のマリウスのほうは無表情のまま、冷たい瞳を宙に漂わせていたが、彼女の視線に気付くとふと目を合わせ、微かに表情を歪めた。
…そうよ。周りの人達はあんな事を言っているけど、未だマリウス自身の気持ちは聞いていない!彼自身から、直接私に対する気持ちを聞いていない!
「マリウス…」
今までの事実を否定したくて、僅かな希望を抱いてフローラは椅子から立ち上がると、ふらふらとした足取りでマリウスの傍まで近付いた。
「マリウス…ねえ教えて、貴方の、気持ち。私のことを、どう思っているのか、貴方自身から、私に、聞かせて…」
一言一言、絞り出すようにやっとそれだけ言葉に紡ぎ出せた。
僅かな希望の糸に縋るように、期待の込めた瞳を向けて。
…お願いマリウス!さっきの言葉は違うと言って!始末して欲しいとか何とか、そんな事なんて嘘だと言って!
そして、そして今でも私を好きだと言って!
そうでないと、私は、私は…!?
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、マリウスはふんと鼻を鳴らし、さも小馬鹿にするように冷たく彼女を見下すのだった。
「どう思っているか、って?決まっているじゃないか、僕は君の事なんて何とも思っていない。君は僕達の復讐の為の道具、単なる人形にしか過ぎないんだよ」
「!?」
次の瞬間、マリウスの唇から発せられた無機質な声に、非情な言葉にフローラは愕然とした。
「そ、んな…だってマリウス、あの時ポートミルの別荘で言ってくれたじゃない!私のことを好きだって、今の私を一番愛しているって!」
先程の言葉が信じられないと言わんばかりに必死の様相で、震える声でそう叫ぶ。
「ああ、確かそんな事を言ったかもしれないね。君を騙す為の嘘の言葉を、嘘の愛の告白をね」
「!?」
だがマリウスのほうは錯乱気味のフローラの言葉にもあくまで淡々と答えるだけである。
「君のような知識も教養も無く愚かで頭の足りない、しかも簡単に男達に脚を開く浅ましい娼婦などに、僕が本気で好きになるとでも、本気で愛するとでも思ったのかい?」
「マリウス、言い過ぎだぞ」
更新日:2017-03-14 07:13:15