官能小説

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よんじゅうよん

あれから数日、

あの出来事以降、時折マリウスが仕事で帰りが遅くなる日があるという以外、特に代わり映えのない日々が過ぎていった。

「……」

はじめのうち、フローラはマリウスの帰りが遅いのを別の事…浮気とか、と勘ぐったりしたものであったが、彼の周りの空気がそれのものとは全く違うものだと察し、その疑いは徐々に消えていった。

…もしかしたらマリウスと誰か、ミリアさんが浮気でもしているかと思ったけど、今の彼の雰囲気から全く女っ気を感じないし、私の勘違いだったのかしら?
そしてあの時、夜中にお義父兄達が屋敷に来ていた時はすごく真面目な表情をしていたみたいだから何事かと思ったけど…気のせいだったのかしらね。

いつもの飄々とした態度のマリウスに、フローラの疑念も日を経つにつれて薄まってゆき、いつしかすっかり忘れ去ってしまっていった。

そんなある日のこと、フローラはマリウスと一緒に久しぶりに彼の仕事上でのパーティーに夫婦として出席していた。

広く煌びやかなホールには大きなテーブルが幾つか並べられ、その台上には沢山の御馳走や飲み物花々等が置かれ、天井からは眩いばかりの水晶のシャンデリアが煌めき、そんな中を大勢の人々…高位官僚の地位にいる壮年の夫妻を主に、が食事や様々な話に華を咲かせていた。

「今晩はマリウス殿。こちらが例の噂の奥方ですかな、商人の娘さんの…」

「うん、そうだよ。凄く可愛いでしょうー!」

ど派手なデザインの正装姿のマリウスは同じ官僚の一員とおぼしき中年の夫妻の挨拶…その視線は侮蔑を含み、表情は嘲りの笑みを浮かべているが…にも相変わらずにこにこと笑顔で飄々とした様子で応対していた。

「……」

始めのうちはあからさまに自分達を馬鹿にした態度を見せていた人達に怒りを感じていたフローラであったが、マリウスのそんな人達の態度に全くぶれない応対ぶりに怒りも徐々に薄まってきていった。

…まあ、マリウスさえ何とも思わなければ私はどう見られたって構わないわ。どうせ私は貧乏商人の娘で元娼婦なのだし。所詮見た目と噂でしか人を判断出来ないあの人達は彼の、マリウスの良さなんて解りっこ無いわよね。

そう思うと、自分達に嘲りの視線を向ける人達が逆に滑稽で哀れに見えるものであった。

「ねーフローラちゃん、向こうに美味しそうなお肉があったよ。取りにいこう!」

ひと通りの挨拶を終えると、早速マリウスがそう誘ってきた。

「ええ、でも私ちょっと喉が渇いたから先にあっちで何か飲み物を取ってくるわね」

と彼の指す場所とは反対の方向を示した。

「うん、解った。じゃあ僕先に行って肉取っておくね。あ、ついでに僕の飲み物もよろしくー」

「はいはい」

言うなりさっさと御馳走のテーブルに向かっていったマリウスの後ろ姿に苦笑いを浮かべていたフローラだったが、直ぐに反対側の飲み物のあるテーブルに向かっていった。

シャンパンとおぼしきグラスのひとつを手にしたフローラは、戻るまで我慢出来ずにくっと一気に中身を飲み干した。

…ああ、美味しい…。

満足げに吐息をつき、マリウスの分のグラスを持って戻ろうとして、ふと傍にいた初老の二組の夫婦の話が耳に入ってきた。

更新日:2017-01-17 10:00:03

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