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おまけ:そのさん
「マリウス、こんな難題をいとも簡単に解けるとは流石だな。お前はこのブランディア家の誇りだ!」
…まだ幼い弟マリウスに向ける父上の期待の眼差しに、わたしは初めてマリウスに…我が弟に嫉妬心を抱いたのであった。
*
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
産まれたての赤ん坊の泣き声を聞いて、部屋の外で待っていたまだ幼かったわたしや弟のランクル、そして父上は慌てたように扉を開け部屋へと入っていった。
「男の子で御座います!」
お産婆の興奮した声に、ベッドを見ればそこにはお産で疲れきった、だが嬉しそうな笑顔を浮かべる母上と、隣には元気よく手足をばたつかせ大きな泣き声をあげる赤ん坊がいた。
「よく頑張ってくれた、レティアナ」
父上が嬉しそうに母上の頬に口づけ、それから横で泣いて暴れる赤ん坊を抱き上げた。
「おお、元気な子だな。それに利発そうな顔立ちをしている。よしよし」
…父上のその赤ん坊の可愛がり様に…わたしが産まれた時は仕事で直ぐには屋敷に戻れず、三日後に初めて赤ん坊のわたしと対面した、その時とは明らかに違うその態度に、当時まだ幼かったわたしは既にこの時からこの赤ん坊に…マリウスに嫌な予感を抱いていた。
いずれこの子は、我が弟はわたしの地位を脅かす存在になるだろう、と。
「凄いぞマリウス!まだ三歳だというのに積み木を使ってこの方程式を導いたぞ!」
「ちちうえ?」
とある日の事。まだ幼いマリウスが偶然にも造った積み木を見て父上や母上が驚きの声をあげたのだった。
「凄いぞマリウス!お前は天才だ!よし、決めた!」
「?」
対照的に何事か解らずにきょとんとするだけのマリウス。
それから父上はわたしやランクルとは別に、マリウスに特別な教育を施すべく超一流の教師達を揃え、まだ幼いうちから徹底的に英才教育を行ったのであった。
「マリウスはすげぇな!ぼくなんかぜんぜんついていけないよ」
「そんなことはないよにいさん」
上の弟ランクルはマリウスの才能を素直に喜び尊敬していた。勿論わたしもその才能を喜びこそはしたが、心のずっと奥底ではその才能に醜い嫉妬心が渦巻いていたのだと思う。
だからこそわたしも頑張った。マリウスに追いつこうと、負けないと。
時間さえ有ればマリウスと一緒に教師達のもとで勉強し、皆が寝静まった後にこっそり起きだして予習復習をしてきた。
それだけの事を、わたしなりに精一杯の努力をして知識を得てゆくのに対し、マリウスはまるで息をするかのように容易く数多もの知識を吸収してゆくのだった。
「流石だなマリウス。お前は我がブランディア家の誇りだ!」
…何故です?わたしも一生懸命頑張ってきたのですよ?!
初等部からずっと成績は常に上位三位内に居て勉学だけでなく体操・乗馬・マナー教育といった教養面でも最高級の評価を貰い、生徒会の役員として頑張ってきたのに、
なのに父上はわたしを褒め称えた事は一度も無かった。
ブランディア家の長男ならさも当然だと言わんばかりの視線を向けるだけで、何ひとつ、称賛の言葉ひとつくれなかった。
それを嘲笑うかのようにマリウスはわたしの築いてきた数々の高成績や名誉を易々と越えていったのだった。
…まだ幼い弟マリウスに向ける父上の期待の眼差しに、わたしは初めてマリウスに…我が弟に嫉妬心を抱いたのであった。
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「おぎゃあ!おぎゃあ!」
産まれたての赤ん坊の泣き声を聞いて、部屋の外で待っていたまだ幼かったわたしや弟のランクル、そして父上は慌てたように扉を開け部屋へと入っていった。
「男の子で御座います!」
お産婆の興奮した声に、ベッドを見ればそこにはお産で疲れきった、だが嬉しそうな笑顔を浮かべる母上と、隣には元気よく手足をばたつかせ大きな泣き声をあげる赤ん坊がいた。
「よく頑張ってくれた、レティアナ」
父上が嬉しそうに母上の頬に口づけ、それから横で泣いて暴れる赤ん坊を抱き上げた。
「おお、元気な子だな。それに利発そうな顔立ちをしている。よしよし」
…父上のその赤ん坊の可愛がり様に…わたしが産まれた時は仕事で直ぐには屋敷に戻れず、三日後に初めて赤ん坊のわたしと対面した、その時とは明らかに違うその態度に、当時まだ幼かったわたしは既にこの時からこの赤ん坊に…マリウスに嫌な予感を抱いていた。
いずれこの子は、我が弟はわたしの地位を脅かす存在になるだろう、と。
「凄いぞマリウス!まだ三歳だというのに積み木を使ってこの方程式を導いたぞ!」
「ちちうえ?」
とある日の事。まだ幼いマリウスが偶然にも造った積み木を見て父上や母上が驚きの声をあげたのだった。
「凄いぞマリウス!お前は天才だ!よし、決めた!」
「?」
対照的に何事か解らずにきょとんとするだけのマリウス。
それから父上はわたしやランクルとは別に、マリウスに特別な教育を施すべく超一流の教師達を揃え、まだ幼いうちから徹底的に英才教育を行ったのであった。
「マリウスはすげぇな!ぼくなんかぜんぜんついていけないよ」
「そんなことはないよにいさん」
上の弟ランクルはマリウスの才能を素直に喜び尊敬していた。勿論わたしもその才能を喜びこそはしたが、心のずっと奥底ではその才能に醜い嫉妬心が渦巻いていたのだと思う。
だからこそわたしも頑張った。マリウスに追いつこうと、負けないと。
時間さえ有ればマリウスと一緒に教師達のもとで勉強し、皆が寝静まった後にこっそり起きだして予習復習をしてきた。
それだけの事を、わたしなりに精一杯の努力をして知識を得てゆくのに対し、マリウスはまるで息をするかのように容易く数多もの知識を吸収してゆくのだった。
「流石だなマリウス。お前は我がブランディア家の誇りだ!」
…何故です?わたしも一生懸命頑張ってきたのですよ?!
初等部からずっと成績は常に上位三位内に居て勉学だけでなく体操・乗馬・マナー教育といった教養面でも最高級の評価を貰い、生徒会の役員として頑張ってきたのに、
なのに父上はわたしを褒め称えた事は一度も無かった。
ブランディア家の長男ならさも当然だと言わんばかりの視線を向けるだけで、何ひとつ、称賛の言葉ひとつくれなかった。
それを嘲笑うかのようにマリウスはわたしの築いてきた数々の高成績や名誉を易々と越えていったのだった。
更新日:2017-06-21 14:21:56