官能小説

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…だが、彼女の心の中に植え付けられた小さな一粒の疑惑の種は、その後少しずつ芽を伸ばして成長していくのだった…。


      *


一方、馬車に乗っていたミリアは先程のフローラとワンダとのやり取りを思い出していた。

『大丈夫お父様っ!』

『儂のことは大丈夫だよ…』

…お互いに思い合い、しっかりとした絆で結ばれた父娘。

「……」

…お父様…、

『私の事などどうなっても構わない!だからミリア、お前は、お前は己の…を貫くのだ…っ!』

『お父様…っ!』

…でも私は、私は…堕ちるところまで堕ちてしまった。

いつの間にか、ミリアの瞳には一粒の光る涙が浮かんでいるのだった。

…そうよ、最早もう戻れない所まで来てしまった。ならばいっそ…!

だが次の瞬間、彼女はその涙を拭き取るなり顔をあげ、凛とした表情になり馭者に命じるのであった。

「直ぐにかの御方の屋敷へと向かいなさい!」

若い男の馭者は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、主(あるじ)たる彼女の凛とした姿を確認すると哀しげな表情を浮かべ、深々と頭を下げて、

「…御意」

そう答え、馬車をとある屋敷へと向かわせるのであった…。

更新日:2016-11-05 11:56:16

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