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今日から、私は─────。 *R-15

パウダールームの大きな鏡に映った自分の顔──。
鏡が映す自分の姿は昨日までとまるで変わらない。

志保は緩くウェーブのかかった赤茶色の髪をひと房指に絡めとる。

「結構髪が伸びたわね。毛先だけでも揃えて来ようかしら?」

日にちもドレスもまだ何も決まっていないが、式まではできるだけ髪を伸ばしておきたい。

鏡の自分と向き合いながら、ドライヤーで乾かしたばかりの髪をさっと手櫛で整えると、
化粧台の椅子から立ち上がって全身をチェックする。

「少し食べ過ぎたわ……」

ずっと食欲がなかったが、今夜は久しぶりによく食べた。

ディナーの席上で食の細い彼女を心配していた新一が、
フォークを口に運ぶたびに嬉しそうな顔で志保を見ていた。

「何よ」

「いや、珍しくオメーの食が進んでるみてーだからさ。うめーか?」

「ええ、さすが評判通りのお店ね。ちょっと家庭的で美味しいわよ。
あまり堅苦しくないところも気に入ったわ。
でも、よく予約が取れたわね」

「結構、苦労したんだぜ」

そう言って彼が笑った。

(いったいどんな手を使ったのかしら?)

一日五組しか客を取らないフレンチの隠れ家的な名店──。

店は全テーブルが個室の一軒家でプライベートな空間で、
お客が心置きなく料理を楽しむことができる。

口コミサイトで知って、以前から志保が行きたがっていたが、
常に三カ月先まで予約で埋まっていて、
事件に追われて忙しい彼とは行く機会がなかった。

そして、今夜も予約で埋まってるからと断られたはずなのに……。

それが今日になって急にキャンセルが出たからと言って、
サプライズで新一が連れて来てくれたのがこのお店だった。

更新日:2018-05-15 22:51:40

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Someday ~ 俺たちのこれから 【コナンで新一×志保】