- 50 / 67 ページ
今日から、私は─────。 *R-15
パウダールームの大きな鏡に映った自分の顔──。
鏡が映す自分の姿は昨日までとまるで変わらない。
志保は緩くウェーブのかかった赤茶色の髪をひと房指に絡めとる。
「結構髪が伸びたわね。毛先だけでも揃えて来ようかしら?」
日にちもドレスもまだ何も決まっていないが、式まではできるだけ髪を伸ばしておきたい。
鏡の自分と向き合いながら、ドライヤーで乾かしたばかりの髪をさっと手櫛で整えると、
化粧台の椅子から立ち上がって全身をチェックする。
「少し食べ過ぎたわ……」
ずっと食欲がなかったが、今夜は久しぶりによく食べた。
ディナーの席上で食の細い彼女を心配していた新一が、
フォークを口に運ぶたびに嬉しそうな顔で志保を見ていた。
「何よ」
「いや、珍しくオメーの食が進んでるみてーだからさ。うめーか?」
「ええ、さすが評判通りのお店ね。ちょっと家庭的で美味しいわよ。
あまり堅苦しくないところも気に入ったわ。
でも、よく予約が取れたわね」
「結構、苦労したんだぜ」
そう言って彼が笑った。
(いったいどんな手を使ったのかしら?)
一日五組しか客を取らないフレンチの隠れ家的な名店──。
店は全テーブルが個室の一軒家でプライベートな空間で、
お客が心置きなく料理を楽しむことができる。
口コミサイトで知って、以前から志保が行きたがっていたが、
常に三カ月先まで予約で埋まっていて、
事件に追われて忙しい彼とは行く機会がなかった。
そして、今夜も予約で埋まってるからと断られたはずなのに……。
それが今日になって急にキャンセルが出たからと言って、
サプライズで新一が連れて来てくれたのがこのお店だった。
鏡が映す自分の姿は昨日までとまるで変わらない。
志保は緩くウェーブのかかった赤茶色の髪をひと房指に絡めとる。
「結構髪が伸びたわね。毛先だけでも揃えて来ようかしら?」
日にちもドレスもまだ何も決まっていないが、式まではできるだけ髪を伸ばしておきたい。
鏡の自分と向き合いながら、ドライヤーで乾かしたばかりの髪をさっと手櫛で整えると、
化粧台の椅子から立ち上がって全身をチェックする。
「少し食べ過ぎたわ……」
ずっと食欲がなかったが、今夜は久しぶりによく食べた。
ディナーの席上で食の細い彼女を心配していた新一が、
フォークを口に運ぶたびに嬉しそうな顔で志保を見ていた。
「何よ」
「いや、珍しくオメーの食が進んでるみてーだからさ。うめーか?」
「ええ、さすが評判通りのお店ね。ちょっと家庭的で美味しいわよ。
あまり堅苦しくないところも気に入ったわ。
でも、よく予約が取れたわね」
「結構、苦労したんだぜ」
そう言って彼が笑った。
(いったいどんな手を使ったのかしら?)
一日五組しか客を取らないフレンチの隠れ家的な名店──。
店は全テーブルが個室の一軒家でプライベートな空間で、
お客が心置きなく料理を楽しむことができる。
口コミサイトで知って、以前から志保が行きたがっていたが、
常に三カ月先まで予約で埋まっていて、
事件に追われて忙しい彼とは行く機会がなかった。
そして、今夜も予約で埋まってるからと断られたはずなのに……。
それが今日になって急にキャンセルが出たからと言って、
サプライズで新一が連れて来てくれたのがこのお店だった。
更新日:2018-05-15 22:51:40