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A Holiday of Area 42

 夢の中で、私は見知らぬ広場に立っていた。空は抜けるように青く妙に宇宙に近いような色をしていた。広場は全体的に無機質なコンクリートと漆黒の大理石のような素材とが合わさった巨大な幾何学的オブジェが文脈もなくちりばめられていた。何をモチーフにしたのか分からない。けれど数学的に見て、十分に複雑でとても美しい形をしていた。この世の中にある一番美しいものだけを存分に詰め込んだような美しさで、どことなく心をがりがりと削ってゆく痛みがあった。

 無数の人々が慌ただしく行き交っていたが彼らのことはあまりよく覚えていない。ただこの世界の住人とすれば、私もそうなりたいと思っていた。

 しばらく辺りを見回しながら歩くと、私はピラミッドの先端を大きく切り取ったようなオブジェの前にたどり着いた。

「ひどいよね……」

振り返るとオブジェの脇に設置されていたベンチに灰色のパーカーに身を包んだ、肌の真っ白い少年がぽっちりとため息をついていた。フードはかぶっておらず見た目は小学生くらいだろうか。よく見ると髪も少し青みがかっている気がする。

 私はあたりを見回したが他にその少年に目をとめているものはおらずどうやら彼は私に話しかけているようだった。

「何がひどいの?」
「人類はもう、怒ってもいい頃だと思うんだ」
「何に?」
「工学(Technology)に…」
「工学?」
「人類はもう、工学に怒ってもいい頃だと思うんだ」
そう言うと青白い少年はうつむいて子供らしく足をばたばたさせた。
「あなたは?」

そう尋ねると、少年はただ首を振った。たっぷりと時間をおいた後、少年は息を吸ってこうつぶやいた。

「この世界が大好き」

更新日:2016-09-08 22:19:34

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