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二毛のカラス
彼女に関する良い評判を耳にする。
クラスの仲間が彼女のことをほめている。
「カラスの頭を撫でることができるんだよね」
などと言っている。
(へー、それは凄いな)とは思うものの
それがどうして彼女をほめる理由になるのだろう。
教室のすりガラスの窓越しにカラスらしき鳥の影が見える。
誰かがそっと窓を開ける。
カラスらしきものは、しかし、縮れた白黒の二毛で
むしろ変な形の子犬を連想させる。
すぐにどこかへ飛び去ってしまったが
窓を閉めると同時に戻ってきてすりガラス越しに姿を見せる。
それで、自分も窓を開けてそっと二毛のカラスに触れてみる。
カラスは逃げずに頭を撫でさせてくれる。
それでちょっとだけ得意になった。
しかし、ゴワゴワした手触り。
空を飛べるみたいだが、どうも
カラスとは違う生き物のような気がする。
更新日:2016-08-27 12:55:12