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向き合う肖像画

挿絵 470*655




だまし絵、トリックアートなどと呼ぶが 
絵とは、もともとそういうもの。

たとえば、こちらを見ている顔の人物画は
どこから見ても、こちらを見ている。

そのように見える平面画の錯覚なのだ。

さて、今この部屋の壁には
二枚の絵が向き合うように飾ってある。

互いを見る、よく似た二枚の肖像画。
一枚がオリジナル、もう一枚がその模写。

ただし、どちらがオリジナルかはわからない。

両者が微妙に異なるのは誰の目にもわかるが 
一方が他方より優れている、とは言い難い。

また、仮に明解な優劣の差があるとしても 
それがオリジナルを決める絶対条件にはならない。

オリジナルの不備を補う模写かもしれないからだ。

まるで詐欺師同士のだまし合いのように
黙ったまま互いに相手を見合う二枚の肖像画。

そんなふうに絵が飾ってあるこの部屋に入ると
なかなかに居たたまれないものがある。
 

更新日:2016-08-02 12:46:11

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