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不快な演奏

最初、パソコンのキーボードを叩いていたつもりだった。
ところが、途中から楽器のキーボードに変わった。

電子ピアノの音がして、ちょっとした即興演奏。
良くもないが悪くもないな、という感じ。

そうこうするうち、ふと気づくと 
目の前の舞台の上で奥の壁を叩く者が現れる。

銀色にメッキされたブリキの塀のような感じ。

彼であったか彼女であったか、こちらに背を向け 
鍵盤状に並んだ薄い金属の板を拳で叩く。

耳障りなひどい音だ。
板がしっかり固定されていないせいだろう。

音楽の基礎ができていない私の演奏を 
暗に揶揄やゆしているような気がしないこともない。

いやだな、と思っていると、舞台の上では 
複数の男女がこちらに背を向けて並んでいた。

それぞれ担当の金属板の前に立って叩いている。

すると、これはあらかじめ計画された演奏であって 
前衛芸術のようなものなのかもしれないぞ。

そのように考えられるので、いくぶん安心したが 
発せられる音は相変わらずひどい。

耳を覆いたくなるほどである。
 

更新日:2016-07-30 19:35:26

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