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尋ね人
「まさか女が一人で店を切り盛りしてるとはなぁ。鸛の外は危険だって誰も教えてくれなかったのか?」
店仕舞い間際、突然押し入ってきた若い男がにやにやしながら瑠美に迫ってきた。
強盗目的か、それとも強姦か。おそらく両方だろう。
あらゆる女性の権利が尊重されていた鸛内とは違い、江戸市中では女性特有の権利は皆無であった。というのも、国の最重要事項の一つである人口増加を担う鸛の女性達はいわば特権階級であり、その責務を担えない女性には一般男性同様の権利しか与えられなかったのである。
その為、鸛の女性と許可なく契った者は合意であっても死罪は免れぬが、鸛外においての強姦は男性相手同様の罪にしかならない。体格的、体力的に男性に劣る女性はこういった輩の最高のカモであり、危険が高い為、鸛を出る女性は余程の事情がない限り安全を考え尼になることが多かったのである。
「当店に何の御用?」
「何の御用?ときたか。可愛い顔して気丈な女だな。てっきりすぐに泣きだすかと思ってたぜ」
わかってんだろ?と男は下帯を緩めながら瑠美に近づいてくる。
「鸛仕込みを一度味わってみたいと思ってたんだよ。女一人で市中に下りてくるんだ、あんたも好き者だろ?」
男という生き物はどうしてこうも自分勝手なのだろう。自分の欲望を正当化し、女を虐げることに何とも思わない。あの村の男達と同じだ。
瑠美の顎に手をかける男に瑠美は極上の笑みを浮かべる。
瑠美は男の手を祓うとその場に膝をつき着物の裾を割り、下帯に手をかける。
「そんなに気になるなら試してみるといいわ。鸛仕込みがどんなものか」
*
*
*
「ぎゃああああああああ!」
辺りの夕闇を切り裂くような断末魔が響き渡る。
「瑠美殿!」
花崎を筆頭に南海、大丸、伊勢丹に三越が四ツ目屋に飛び込む。
「無事か?!」
店内に立ち尽くす瑠美の足元に、股間を押さえて悶絶し、張り型が突っ込まれた尻穴から太腿にかけて血を流す男が倒れていた。
「瑠美ちゃん?これは一体?」
冷めた目で男を見下ろす瑠美に大丸は顔を引きつらせる。
「ああ、鸛仕込みの性技が知りたいって言うから教えてあげたの。それにしても男って本当に馬鹿よね。どうしてこうも無防備に自分の急所を晒せるのかしら?」
「…何したん?」
「何って、か弱い乙女に乱暴しようとするから尿道に簪ぶっ刺して、店に飾ってあった張り型突っ込んでやったの」
聞いてるだけで痛い、と大丸はキュッと自分の股間を押さえる。
「瑠美殿!本当に無事なのか?血が…血が流れておる!」
「花崎様?どうしてここに…」
突然の来訪者に驚きながらも「血?」と瑠美は首を傾げる。自分はどこも怪我などしていないのに。
花崎が指さす瑠美の足首には確かに一筋の鮮やかな血液が伝っていた。
店仕舞い間際、突然押し入ってきた若い男がにやにやしながら瑠美に迫ってきた。
強盗目的か、それとも強姦か。おそらく両方だろう。
あらゆる女性の権利が尊重されていた鸛内とは違い、江戸市中では女性特有の権利は皆無であった。というのも、国の最重要事項の一つである人口増加を担う鸛の女性達はいわば特権階級であり、その責務を担えない女性には一般男性同様の権利しか与えられなかったのである。
その為、鸛の女性と許可なく契った者は合意であっても死罪は免れぬが、鸛外においての強姦は男性相手同様の罪にしかならない。体格的、体力的に男性に劣る女性はこういった輩の最高のカモであり、危険が高い為、鸛を出る女性は余程の事情がない限り安全を考え尼になることが多かったのである。
「当店に何の御用?」
「何の御用?ときたか。可愛い顔して気丈な女だな。てっきりすぐに泣きだすかと思ってたぜ」
わかってんだろ?と男は下帯を緩めながら瑠美に近づいてくる。
「鸛仕込みを一度味わってみたいと思ってたんだよ。女一人で市中に下りてくるんだ、あんたも好き者だろ?」
男という生き物はどうしてこうも自分勝手なのだろう。自分の欲望を正当化し、女を虐げることに何とも思わない。あの村の男達と同じだ。
瑠美の顎に手をかける男に瑠美は極上の笑みを浮かべる。
瑠美は男の手を祓うとその場に膝をつき着物の裾を割り、下帯に手をかける。
「そんなに気になるなら試してみるといいわ。鸛仕込みがどんなものか」
*
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「ぎゃああああああああ!」
辺りの夕闇を切り裂くような断末魔が響き渡る。
「瑠美殿!」
花崎を筆頭に南海、大丸、伊勢丹に三越が四ツ目屋に飛び込む。
「無事か?!」
店内に立ち尽くす瑠美の足元に、股間を押さえて悶絶し、張り型が突っ込まれた尻穴から太腿にかけて血を流す男が倒れていた。
「瑠美ちゃん?これは一体?」
冷めた目で男を見下ろす瑠美に大丸は顔を引きつらせる。
「ああ、鸛仕込みの性技が知りたいって言うから教えてあげたの。それにしても男って本当に馬鹿よね。どうしてこうも無防備に自分の急所を晒せるのかしら?」
「…何したん?」
「何って、か弱い乙女に乱暴しようとするから尿道に簪ぶっ刺して、店に飾ってあった張り型突っ込んでやったの」
聞いてるだけで痛い、と大丸はキュッと自分の股間を押さえる。
「瑠美殿!本当に無事なのか?血が…血が流れておる!」
「花崎様?どうしてここに…」
突然の来訪者に驚きながらも「血?」と瑠美は首を傾げる。自分はどこも怪我などしていないのに。
花崎が指さす瑠美の足首には確かに一筋の鮮やかな血液が伝っていた。
更新日:2016-07-10 14:22:27