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小説

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第10話 ウォータールー橋~エルガー「威風堂々」



今年も学年末試験の季節がやってきた。毎年、この時ばかりは、みな寮に閉じこもって試験勉強に取り組む。演奏の実技はともかく、和声や対位法の勉強はそう楽しいものではない。こういう時に限って試験とは関係のない本が読みたくなって、ニーチェやラッセルの哲学書を読み散らかしたり、夏休みの計画をあれこれ考えたりする。

僕は、その年の夏も、奴とドイツアルプスの別荘でのんびりしようなどと、暢気に思っていた。ユリウスやイザークも誘って、美しい緑の山々を一緒にハイキングしたり、朝から晩まで音楽三昧で過ごすことも夢想した。

もっとも、彼女がいると、奴も僕も、いつものように素っ裸で泳ぐわけにはいかない。勘のいい母は、女の子だとすぐわかってしまうだろう。一方、親父は、ドイツ帝国の男子たるもの、体を鍛えるべし、上半身裸になってみろなどと言い出しかねない。やっぱりやめておくか。

週末、試験勉強の息抜きに、ミュンヘンの家に帰った。寮の食事ばかりでは、気分が滅入ってとてももたない。うまいものが食べたくなった。




更新日:2016-09-03 07:07:48

ダーヴィト・ラッセン回顧録 オルフェウスの窓ss Op.5