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第2話 1900年パリ万国博覧会~ブラームス「子守歌」

挿絵 431*600

【L'Exposition de Paris 1900, Poster】



僕らが出会った1900年は、パリで万国博覧会が開かれた年だった。

パリ万博の見物を計画していた両親から、彼も誘ったらどうかという提案があった。奴に話すと、一瞬目を輝かせたが、すぐ目を伏せてちょっと考えると答えた。数日経って、一緒に行くという返事があった。当時はわからなかったが、旅券のことなどを心配して誰かに相談したりしていたのかもしれない。

パリでは、オテル・リッツに泊まった。最高級の宝飾店が軒を連ねるヴァンドーム広場に面した華やかなホテルだ。僕はコンコルド広場のクリヨンの方が落ち着いていて好きだが、当時はまだなかった。
母はホテルの部屋にうるさい。駅まで出迎えに来た親父の会社のパリ支店長が、母の顔をちらちら見ながら、緊張した面持ちでホテルのスイートまでついてきた。部屋を一通り見分し終わった母は、
「悪くないわね。」と言って豪奢なソファに身を沈めた。これは母の最大級の賛辞だ。親父も支店長もほっとしている。
「ここの料理人はエスコフィエと言ってなかなか評判がいいんですよ。」と、支店長が付け加えた。
奴と僕は、スイートの隣のツインベッドルームをあてがわれた。ヴァンドーム広場を見下ろす、なかなか美しい部屋だった。


更新日:2016-10-16 18:30:17

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