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小説

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第5話 カーニヴァルの後~フランク ヴァイオリン・ソナタ

あのカーニヴァルの後、奴は変だ。

態度が変だ。落ち着きがない。話しかけてもうわの空だ。

音も変だ。バッハもベートーヴェンも安定して弾けていない。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの10番が課題になっているが、いつもの奴らしくなく、不安定な感じがする。

ブラームスのソナタの3番も、僕は奴のいつもの理知的な弾き方が好きだが、最近は、第1楽章の出だしからして何だか感情過多でねっとりしている。あの曲は、そういう演奏の仕方もあるが、僕は奴らしくなくて好きではない。

このところ、奴は、フランクのヴァイオリン・ソナタにはまっている。
特に、激しい第2楽章だ。イザークをつかまえて、合同レッスン室の隅のピアノのところで、繰り返し弾いている。

この第2楽章はピアノのパートが難しく、負担も大きい。速いパッセージを超高速で何度も弾かされて、イザークもやや疲れ気味だ。

しかし、奴はやめようとせず、イザークに、
「もう一度、202小節のアニマート・ポコ・ア・ポコ(だんだん速く)からだ。」と怒鳴り、鬼気迫る形相で繰り返し弾き続けている。

みなは遠巻きにして、彼らの尋常でない様子にあっけにとられている。

「もう一度最初から通しでいくぞ。」
イザークの前奏の後、強烈なフォルテでまた弾き始めた。

https://www.youtube.com/watch?v=PzwJ_jKNluw
【Cesar Franck, Violin Sonata 2nd movement by Leonard Schreiber】
(202小節は、7分01秒あたりからです。)



更新日:2016-07-19 23:25:12

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