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第5章 白夜のバラード ~ ショパン バラード第4番



おれは、「結婚」という言葉が苦手だった。

それは、おれ自身が結婚という枠の外にあった男女の間の子ども、いわゆる婚外子であるからということもある。

でも、それだけではない。惚れた女との大切な間柄を、そういった制度の枠組みにはめ込むのが嫌だという、ちょっと青臭いが、潔癖な気持ちがあることも事実だ。

親父とママンが結婚できなかったように、当時の結婚の制度は、自由な男女の結びつきではなく、実態と乖離していることも多かった。

結婚式の教会で虚空を見つめる花婿、陰鬱な表情の花嫁。
彼らの実情を知りながらも、作り笑いをして祝福する周りの人々の欺瞞。
あるいは、外向きには夫婦だが、夫婦の実質がなくなって久しい夫と妻。もはや男女の関係もない。
あのミハイロフ侯爵家の周囲でおれが見聞きした結婚とは、そういうものだった。
「結婚」や「妻」といった言葉は、偽善的にさえ感じられた。ママンは、その制度に傷ついたひとでもあった。


更新日:2017-02-14 22:59:38

ショパン・バラード第1番 オルフェウスの窓ss Op.4