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帰宅と出発


薄汚れた看板にはこう書いてあった。

「この先 主都 アルティエ」

やっと着いた、とセネルは思った。田舎から何日も歩きっぱなしで、今にも倒れそうなぐら疲れていた。

後ろを振り返ると、行商人が近づいてきていた。中年のおじさんだ。

すれ違う時、セネルはぺこりとおじぎしたが、おじさんの方は逃げるように速足で行ってしまった。

そりゃそうだろう。今のセネルの格好は「かっこつけた汚らしい不良」だ。つまりダサいヤンキー。

都会に来るのは初めてじゃないが、本人は服装をちっとも気にしてない。せめて旅をしてきた人らしくシンプルな旅装にすればいいのに。

ついでに、背中のばかでっかい斧がセネルを危ない野郎だと強調している。一応武器だが、どっちみち凶器だ。

そんなセネルの旅もやっと終わった。アルティエはもう目の前だ。

1年ぶりの…15歳まで過ごした…第二の故郷………アルティエ。



…あまり何も変わってなかった。相変わらず、建物と人は多いがのんびりとした雰囲気のある不思議な都会。

道の幅がやけに広いのは馬車が通るためだ。そして歩道には市場のように様々な出店が並んでいる。

あと早朝なので、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

耳を澄ましながら、セネルは町の中心から離れるように歩き続けた。

派手な色の屋根の繁華街を通り過ぎ、閑静な住宅街を抜け、目指すは空地の多い町の東側。そこ、正確に言うと、そんな東側のはずれにある王立武道道場がセネルの目的地だ。



道場の師範は誰よりも早起きであった。

「ウェイ、起きなさい。今日はセネル君が来るはずだよ」

まるで父親のように、師範はウェイの部屋に声をかけた。

茶髪の青年は自分の寝室から出てきた。

「なんだ、起きてたのか!」

「あいつ、ほんとに来るんですか?」

道場の隣にある師範の家で、二人はセネルを待っていた。本当なら、セネルは昨日の夜に着くはずだった。

ウェイがイライラしているのも当然だ。

「来るでしょ。一応、王様の命令なんだからね。君も一年ぶりに会えて嬉しいでしょ?」

師範の質問を無視し、ウェイはトイレに行ってしまった。師範は返答に諦めため息をつく。

大体、聞かなくても分かるし。ウェイの本音は常時以心伝心だ。

「懐かしいな。セネル君、16歳になってるのか」

「すいませーん」

聞き覚えのあるの声が玄関から聞こえた。ウェイのトイレを待っているわけにはいかないので、師範が出た。

玄関前には、細身で筋肉質な黒髪の少年がいた。

「よっ、来たな」

「お久しぶり、先生。あいついる?」

両性的な顔をにやつかせて、セネルは聞いた。

更新日:2016-06-22 15:18:02

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