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アレクセイと恋人ー第1章

挿絵 474*631



アレクセイの奴が、突然見たこともない女性を連れてやって来た。ドイツにいた時の知り合いだが、しばらくこちらの家に置いて欲しいと…。さて。

あいつが連れて来たその“女性”は、男装をしていた。金髪に碧い瞳のドイツ人。年は妻と同じ位だろうか。恩ある女性を救出する作戦の途中で、偶然再会したらしい。連れ帰ったのは目的のアナスタシアではなく、全く別の女性だったとは。作戦は失敗、マダムコルフの店に集まっていた多くの同志たちも逮捕されてしまった。慎重に準備を重ね万全を期していたのに、何もかも台無しで気落ちしているかと思いきや、奴は沈んでいるふうでもなかった。それは彼女に会ったからなのか。

7年ぶりに会った彼女は、驚いたことに記憶を失っていた。アレクセイが学んでいた音楽学校の後輩だという。彼女の名前は「ユリウス」、ドイツでは男性の名前だ。なんとも不思議な話である。

女っ気なんか全くなかったあいつに、彼女を紹介された時はさすがの俺も驚いた。しかしユリウスを見た瞬間に気づいた。彼女こそあいつの心の中に住んでいた、「大切な人」だったのだろう。

容姿と雰囲気はもちろんのこと、言葉使いや身のこなしでもなんとなく分かる。ユリウスは貴族の出身だ。その彼女がこのロシアまで、全てを捨ててアレクセイを追ってきていた。それほど愛していたとは、互いに想い合っていたのか。

突然大声を張り上げて怒り出したかと思ったら、部屋を出ていった。一体どうしたというんだ、アレクセイ。いくら政敵の話をされたからといって女性を怒鳴りつけるなんて、全くお前らしくもない。かわいそうに、怒鳴られたユリウスは訳が分からず、お前の余りの剣幕にうろたえている。しょうがない奴だな。本当は彼女のことを、そんなふうに感情を抑えられないくらい想ってるんだろう?7年経とうが今でも好きだと、認めろよ。








[Wordpress.com:Lauri Blank]

更新日:2017-05-20 10:58:26

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