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クッキングスクール・パニック ファイナル

「ほら、よそ見してるから……もうすぐ沸騰するわよ。
はい、いいわ。昆布を取り出して!
そのまま沸騰したら、火を止めて削り節を入れるのよ」

「はいはい、灰原先生……わーってるよ」

「返事はいいから手を動かしなさいよ。
江戸川君、出汁を取るポイントは順序よく、手際よくよ。
また火をつけて沸騰したら、すぐ止めてよね。
ここで煮立たせないでね。風味が悪くなるわよ」

「へぇー、了解!」

(ったく、なんで俺が料理の練習なんかしなきゃいけねぇーんだよ)

せっかくの週末の土曜日、サッカー部の部活から帰ってくるなり、
俺は阿笠博士の家のキッチンに灰原と二人で並んで立って、
料理の特訓をさせられている。

(あーあ、こんなことなら、隣で推理小説を読んでた方がマシだよな)

うっかり博士の家まで出向いて「ただいま」と灰原に顔を見せたもんだから……

「あら、今日は早かったじゃない?
じゃ、これから料理の練習をしましょう」

となったのだ。

俺は嫌々ながらに頭に叩き込んである手順通りに一番出汁を取った。

もちろんこの後、二番出汁まで取らされるのだ。

事の発端は例のシェフ・トウゴウが殺された現場での、
俺の迂闊なひと言から始まっている。

『へーへー、わーってるって……俺も手伝うからよ』

あの時、殺人現場に手一杯で、
何も考えずに灰原の料理の手伝いを申し出たばっかりに……。

あのひと言が現在の俺の災難を招いていた。

更新日:2018-06-22 21:23:38

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