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クッキングスクール・パニック その四

ダラダラと子供たちと話しているうちに灰原の料理も完成したようだ。
灰原の手によって彼女拘りの料理の品々が目の前に並んでいく。

「うわっ、すげぇウマそう!」

「綺麗な飾りつけですね。手をつけるのがもったいないです」

「すごい! 人参がもみじで大根がイチョウで、湯葉がまん丸のお月さま!
それから、リンゴがウサギさんだね。これって十五夜だよね」

(へぇー、歩美、よく気づいたな)

「あっ、でも、円谷君は人参が嫌いじゃなかった?」

「え、いえ、その……灰原さんの作った物に僕の嫌いな物なんてありませんよ!」

(おいおい、光彦……それ、愛が勝つってやつか。いや、哀が勝つかな?
俺も光彦のこと言えねぇーけどな)

灰原が作ったものなら何でも食べている。
いや、食べさせられている。

「どれどれ……ほほお、なるほど、この白玉団子がお月見団子ってわけじゃな。
餡子が絡んでうまそうじゃわい! 哀君は手先が器用だからの」

そう、歩美の言う通りだった。

灰原はさすがというか、やっぱりというか、健康志向そのままに、
ヘルシーなキノコをテーマにして秋のおもてなし料理を作ったようだが……
灰原の御膳には目でも楽しませようと工夫が凝らされている。

黒塗りのお盆の上には小さなススキを添えて、
うさぎがお月見する十五夜をイメージしたかのように、
小鉢や皿に盛られた料理が飾りつけられていた。

『魅せる』という点ではまずは合格だ。

(けど、問題は味だよな……)

まあ、彼女の料理の腕前は、毎日食べている俺がすでに保証済みだが……。

更新日:2018-06-22 21:19:29

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