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悪霊退治

『優しい南海様の事大好きですもん』
 嬉しそうにそう言ってくれた音の笑顔が瞼に浮かぶ。
 本人には何の罪もないのに、憑いた悪霊を祓えないというだけで殺さねばならない。理不尽な命令に、夜道を歩く雷本人を目の前にしてもなお、実行に移す決心が南海にはつかなかった。
 お奉行はああ言うたけど、祓えんかどうかはやってみなわからん。斬るんは最終手段や。
 実際、自分の力での除霊は難しいことも、中途半端な除霊は危険極まりないことも分かっていた。だが、何もせずに音を斬ることは南海にはどうしてもできなかった。
「音殿!」
「南海様?」
 夜道で急に声をかけられ、驚く音の首に除霊用の紫の数珠をかける。呪を唱えようとした途端、南海の頬に痛みが走る。
「くっ!」
「南海様っ!」
 自分の名を呼ぶ雷の体からいくつもの白い筋のようなものが放たれ、南海に襲い掛かる。体を丸め、襲われる面積を小さくする。いくつもの筋の中に、ひときわ大きなものが首をめがけて飛んでくる。
「かまいたちか!」
 流血痕のない死体。それはこいつが被害者の血液を吸い尽くしていたからに違いなかった。
 あかん、やられる!
 そう覚悟した瞬間、かまいたちが破魔矢で射貫かれる。
「この馬鹿がっ!」
 必死の形相で駈け寄ってきた髙島屋が音と南海の間に入る。音の首にかかった数珠を引きちぎるとそのまま音を蹴り飛ばした。
「力のない者が中途半端に除霊に手を出したら命取りなのはお前が一番よく知ってるだろう!」
 南海を怒鳴りつける髙島屋の顔には焦りの色がみえた。
「お奉行…何でここに?」
 髙島屋は本気で怒りながら南海を背にかばい、音を見据えると腰に下げていた刀を抜き、斬りかかる。
「お奉行!」
「わあああああっ!」
 目をぎゅっと閉じて顔をかばう音の腕が刀で切り裂かれ、鮮血が噴き出す。と、同時に、ぶわりと女の霊が飛び出してくる。
「今だ!」
 髙島屋が合図をすると、霊が鎖状のものでぐるぐると拘束される。
「髙島屋様、聞いてた話と違うじゃないですか。危うく取り逃がすところでしたよ」
「東武?」
 闇から鎖の端を握って現れたのは東武だった。その後ろには篝火を持った僧が何人か続いている。
「よいしょっと」
 東武は大根でも引き抜くように音から霊を引き抜くと、その場に音が崩れ落ちる。
「音殿!」
 崩れ落ちる音を抱きとめ揺するが、気を失った音は目を覚まさない。腕からは多量の血が噴き出している。
「同化しかけてた悪霊を無理やり引き剥がしましたから、かなり体が弱っています。数日間は目が覚めないでしょう。その間、悪霊の残滓があった場合に備えて祈祷する必要もありますから寺に運びましょう」
霊を鎖できっちりと縛り、東武は僧の用意していた行李に入れ、札で封をする。
「なんであんたがここに?」
「なんでって、お奉行の命令だからですよ?南海様が刀で目標に斬りかかり、悪霊が体から出てきたところを僕が捕縛するって作戦だったでしょう?なのに急に南海様が除霊を始めるから驚きました。本体と同化しかかった悪霊は一度分離させないと祓えませんから」
「そうや!鬼子に憑いた霊は憑物落やないと取れん言うとったんや!お奉行!僕を騙しましたね!」
 ハッとして南海が高島屋を責め始める。
「は?騙してなんかないよ。だってこの東武が憑きもの落しだもん」
 責め立てる南海に、高島屋はしれっとして答えた。
「そんな馬鹿な!お奉行、憑物落はこの国に数えるほどしかいない言うたやないですか!」
「だから、その数えるほどしかいないうちの一人がこの東武だよ。偶然江戸に来てたんだ」
「そんな偶然あるか!」
知ってたんや。お奉行は最初から東武が関係者の名を知ってて、わざと僕に教えなかったんや。
「最初から殺さんでいいならそう言うてくれればええやないですか!僕がどんだけ悩んだ思います?」
「だから最初から殺せなんて言ってないだろ?私は斬れって言ったんだ」
「詭弁や!僕が勘違いしとるのわかってて教えてくれんかったやろ!自分で作戦立てといて、なんで教えてくれんのです?」

更新日:2016-04-30 23:44:06

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