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シューベルトの小品,歌曲集からの選曲

1)シューベルトの小品,歌曲集からの選曲

 まず,同ソナタの表題は,アルペジョーネとピアノのためのソナタであるが,当時はフォルテピアノを指していた.選曲候補を演奏する場合,理想をいえば時代を彷彿とした音楽表現を醸し出すことができる19世紀当時のオリジナル楽器を使用するのが最も望ましいのではないだろうか.

 次に,シューベルトの小品をアルペジョーネで演奏できる編曲を行う.
例えば,「野バラ」(Heidenröslein.Op. 3, No. 3, D. 257-2. 1799),「セレナーデ」(Ständchen Schwanengesang Nº1 Op.72-4, D.957-4,1828).
名曲に挙げられる「セレナーデ」は,分散和音(アルペジオ)の特徴から,ギターで作曲されたのではないか,とさえ覚える曲であるが,アルペジョーネのソロ,またはギターとアルペジョーネのデユオにも非常に適合した曲といえよう.

 さらに付け加えるとすれば,セレナーデ は, 現在,テノール:ペーター・シュライヤー (Peter Schreier),ピアノ:ルドルフ・ブッフビンダー (Rudolf Buchbinder) の演奏でもよく知られているだけに,歌とアルペジョーネとのデユオも良い組み合わせかもしれない.

 「菩提樹」(Der Lindenbaum, Winterreise Op.89,D911,1827年),「アヴェ・マリア」(Ave Maria, D.839,1825年)などの編曲がある.

 シューベルトの頂点に立つ歌曲といえば,「美しき水車小屋の娘―1.さすらい」(Die schöne Müllerin D 795-1, Das Wandern,1825年),「夕映えの中で」(Im Abendrot),「ミニョンの歌I,II(D877-2,3)」(Lied der Mignon, D877-2, -3)などの楽曲があげられる.
 これらは,ギター伴奏で演奏される機会も多くあり,しかもメロディカルな楽曲であることからもアルペジョーネの情緒性とマッチする選曲であるだろう.
 参考までに,「美しい水車小屋の娘」は,シューベルトの時代にすでにギター版に編曲されていた.現代ではコンラート・ラゴスニック(Konrad Ragossnig, 1932-)が編曲し,シュライヤーとの演奏が有名である.13)ラゴスニックの編曲は,ギターが歌の表現をしっかりと支え,また歌と対話するなど表現が豊富である.これもアルペジョーネで演奏する価値がありそうである.
「美しい水車小屋の娘」は,現代のテノール,ペーター・シュライアーの名演奏でも知られるため,アルペジョーネと歌は合うかもしれない .

 Litanei D343(連祷) Franz Peter Schubertもしっとりとしたギターの伴奏と歌が融合する選曲の一つであろう.
 シューベルトの歌曲には,作者の存命中にギター伴奏用に編曲されて出版されていた.
 なかでも,出版元であったディアベッリ(Anton Diabelli, 1781-1858)自らが行った編曲がある .例えばシューベルトの最初の歌曲集(Op.1-7)の中から4曲を選びギター伴奏歌曲の楽譜として出版している.1828年にかけて26曲ほどの歌曲がピアノ伴奏用とギター伴奏用の両方が出版された.
ヨハン・カスパール・メルツ(Johann Kaspar Mertz, 1806-1856)らギタリスト,作曲家でもあるヴィルトゥオーゾによってなされたものなどいくつか存在する.
 この傾向は,19世紀前半のウィーンにおいて,ギターという楽器が極めて一般的な家庭楽器であった証である.

更新日:2016-03-14 22:44:06

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シューベルトが愛した弦楽器・アルペジョーネ