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レパートリーの開発研究

挿絵 798*503


4.レパートリーの開発研究

①シューベルティアーデとアルペジョーネの関わり

 1824年にシューベルトは,同ソナタを作曲し,翌1825年にシュスターにより初演され,1826年以降には,フォーグルが30曲ものシューベルト歌曲を演じた.音楽サロン(シューベルティアーデ)が開催された中,シュスターが同ソナタを演奏したことがきっかけで,アルペジョーネは,新しい楽曲のジャンルを創造したにちがいない.
 ギターとチェロの複合楽器で,ソロと伴奏の両方を操れる話題性ある新作の弦楽器,アルペジョーネは,演奏会にはふさわしい斬新な存在感があったと思われる.

②アルペジョーネにふさわしい現在のレパートリーとは

 前述したとおり,歴史上,アルペジョーネのために作曲された作品は,シューベルトの同ソナタしか残っていないが,アルペジョーネが19世紀の歴史的楽器であり,当時のオリジナルの楽器でさまざまなレパートリーが演奏できる可能性について以下提案する.

 手掛かりとして,まず,音楽サロン,シューベルティアーデに関係した音楽家たちの作品から探っていく.

 次に同ソナタに関連する,ガスパール・カサド・イ・モレウ(Gaspar Cassadó i Moreu 1897-1966)の《アルペジョーネ協奏曲Cello Concerto in A minor, based on Schubert's Arpeggione Sonata, D.821》がある .12) 
 カサドは,同ソナタを独奏チェロと弦楽オーケストラのためのコンチェルトに編曲しており,シューベルトの同ソナタへの深いオマージュを込めているとみられる.特徴は原曲にはないカデンツァが付け加えられ装飾音が増えているなどの付加価値をもっている.
 シューベルト作曲,同ソナタの原曲とカサドによる協奏曲を除くと,アルペジョーネのための作品は,室内楽の編曲ものとオリジナルの現代曲に分類できる.
 
 以上を参考にしながらアルペジョーネを演奏するべき理想的な位置づけを考えてみた.

図1:アルペジョーネの位置づけとレパートリーの開発


 分析軸を2つ設置した.すなわち,横軸としては時間軸を,縦軸には音楽表現の発展形態軸を置き,ポジショニングマップを描くことで確認することにした.

 時間軸は,同ソナタを原点に,左端は18世紀以前の曲を,右端は21世紀・現代の曲を分析の要素を置いた.

 縦軸は音楽表現の発展形態であり,上部が室内楽,そのうち室内楽の要素には,ソロ,デユオ,小編成のアンサンブルを含むものと設定している.下部が交響曲をそれぞれ分析の要素とした.
 ここでいう「発展形態」は,日本の伝統芸の伝承における概念を援用している.
 すなわち,日本の伝統弦を受け継ぐ「守」「破」「離」という段階がアルペジョーネの位置づけを考えるヒントになるのではないだろうか.例えば,剣道や茶道などで修業における段階を示すものである.
「守」は,師や流派の教え,型,技を忠実に守り,確実に身につける段階.
「破」は,他の師や流派の教えを考え,良いものを取り入れ,心技を発展させる段階.
「離」は,一つの流派から離れ,独自の新しいものを生み出し確立させる段階
などであると仮定する.
 こうした段階をアルペジョーネの音楽表現の拡大(レパートリー候補の手がかり)に当てはめるとどうなるか.

 まず,「守」:亡き作曲家シューベルトやアルペジョーネ楽器工房シュタウファーの遺志を尊重しつつ,シューベルティアーデの音楽仲間の作品をアルペジョーネの音楽表現の手掛かりにする.

 次に「破」:時代を経てカサドが交響楽としての同ソナタを編曲していることに着目.編曲は楽曲をオーケストレーション化するだけではあったが室内楽より一歩発展しており,こうした原曲をもとにした編曲もひとつの表現上の手段となるはずである.

 そして「離」:同ソナタや編曲を離れた現代曲への開発である.

 時代考証の視点から大まかに「守」「破」「離」の流れを捉えたが,具体的には次にあげる開発するべき選曲が望まれる.

 開発するべき選曲の対象とその重要の度合いは3つの基準を設けた.
1)シューベルトの小品,歌曲集からの選曲,
2)シューベルティアーデのサロン仲間からの選曲,
3)現代曲による選曲,などの順で分類した.

以下それぞれについて述べる.

更新日:2016-03-15 11:04:50

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シューベルトが愛した弦楽器・アルペジョーネ