官能小説

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佐智の演奏が始まる前に、


「悪い・・遅くなった・・」、

そう言って、スティーブがやって来た。



その手には、やっぱり淡いピンクのバラが
抱えられていて、

スティーブは写真のテーブルにそれをそっと
置いて、ひざまずき、目を閉じた。



俺は、その姿を見つめている事しかできない。

声をかけることも、その写真にひざまずく事さえ
も、出来ずにいる。




会場の照明が弱まると、ゆっくりと佐智の演奏が
始まった。




佐智が弾いたのは、やはりあの曲。

皆がわかる様に、託生の真似をする。



会場には、涙を流す姿が、
そして、声を我慢してその肩を揺する
者が・・


俺の頬にも涙が流れていた。







そんな俺の横に来たスティーブが、

「お前に報告があるんだ。」、

そっと、声をかけた。

小さく頷いた俺を確認するとスティーブは
視線を佐智へと戻し

俺たちはゆっくりと目を閉じた。







佐智が、3曲を弾き終えステージから下がると、
ゆっくりと照明が戻された。

涙をぬぐう者たちに、スタッフが新しい飲み物
を配る。




「いい事か、それとも悪い話しか?」、

ワインを一気に空けて俺が聞くと


「お前にはどっちかな?」、

悪戯っ子のようにスティーブはくすっと
笑って入口に向かって手招きをした。

直ぐにスティーブのSPが動いた。




そのSPの後ろには、小柄な女性が付いて
くる。


「もしかして・・・?」、

スティーブを見ると、


「ああ、お前に逢いたいって言うからさ・・・」、

そう言って彼女を自分の隣に置いた。


「やっと、その気になったのか?」、

チラッと視線を送ると


「ああ、俺の中に、彼がいてもいいって、言って
くれたんだ・・・」、


スティーブは正直に

そしてまっすぐに俺を見てそう言った。


「マリーおめでとう、」、

俺がその手をにキスを送ると


「ありがとう、ぎい・・あなたも、前に進ん
でね・・・」、

少しだけ首を傾げて優しく笑った。


「・・・わかってる・・・」、

小さく頷いて、俺は二人を抱きしめた。





確実に時が流れていた。

更新日:2017-06-19 14:57:40

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