官能小説

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「奥様はどちらに?」、


奥様の第一秘書の瀧澤さんは、私が生まれる前から奥様の
ご実家で秘書として、また執事として奥様に仕えてこられた
優秀な方だ。


既に、定年退職の時期を軽くすぎているのだが、その容姿
そして姿勢、会話すべてが、年齢を不詳にしている。


「どのような用件ですか?」、

その何もかもお見通しな瞳が、冷たく一言を返す。


義一さんのそばを離れて、ここパリに来て既に1年以上一緒に
過ごさせて頂いているのに、奥様の行動は、私には教えて貰う
事はないのだ。


わたしは、ここでは新米秘書。

義一さんと奥様の連絡係りであり、時間の許す限り、この身体は
託生さんの捜索に使う事と、指示が出ている。


「先ほど、総帥から連絡がありまして、奥様のご様子を確認・・」

「それならば、私から連絡を入れます」、

全てを伝える前に、答えが返って来てしまい、瀧澤さんは背を向ける。



「待って下さい!」、

たぶん、周囲の者すべてに緊張が走ったはず。


自分でも、こんなに声を張り上げたのはいつ以来だろう・・・。


「私の仕事です・・・」、 情け無く吐き出した声は小さかった。







「一緒に来なさい・・」、

俯いた私にかけられた声

ゆっくりと顔を上げると私を見ていたその瞳は、

優しく笑っていた。



更新日:2017-06-22 23:58:51

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