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第8話

あれから数時間、街の人達も協力しサトシを探したが姿も手掛かりさえも無かった…。

まるで、始めから居なかったかのように…。

「どうして居ないの?」

不安げなユリーカ。

「バカサトシ」

呟いたのはシゲル。

みんな落胆していた。

悔しかった。

力になれなかった…、守れなかったと。

「まだ、居なくなった訳じゃないよ」

シゲル達にかけられた声は少女特有の高めのもの。

「どういう事?」

とヒカリ。

「サトシお兄ちゃんに会いたい?」

と、少女は問う。

「勿論!」

とシゲル達は声を揃えて言う。

会えるのなら会いたい。

それは心から思っていた。

何故と、問いただしたかった。

「分かった。会わせてあげる。私に着いてきて。どんな形でも驚かないでね」

きっと、最後になるから。

そんな最後の少女の呟きはシゲル達の耳には届かなかった。

少女が前を歩いていた為に気づかなかった。

少女が…哀しげな顔をしていた事に…。

更新日:2019-09-29 01:21:51

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