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かぶ勝負 前篇

 ハジケ村近くの荒野をベーベベはカーナビの案内通りに車を走らせるがどんどん風光明媚になって行き、まだまだ遊びたい盛りの20代半ばでロハス趣味もなさそうな破天荒がこんな山に囲まれた田舎に好んで住むとは思えなくて、べーべべは助手席のボーボボに確認した。
「破天荒の奴、本当にこんな田舎に居るのか?」
「首領パッチからの葉書に書いてあったから、大丈夫でしょう」
 意外に筆まめな首領パッチからの葉書には破天荒も帰って来てハジケ組が珍しく全員揃ったとあり、ハジケリストは嘘に嘘を畳み掛けるがハジけない嘘は吐かないので、ボーボボは破天荒がハジケ村に居る確信を持っていた。
 村に近付いた所でボーボボが運転してみたいと甘えた口調で言ったが、嫌な予感しかしないベーベベは絶対にさせず、道路が未舗装のこんな田舎の村にまでコンビニがあって、コンビニすげー、と感動し、カーナビの案内終了地点に立派な門構えの和風の屋敷に確かにハジケ組の看板がかかっていた。首領パッチは結構な金持ちなのだろうかと言う疑問が湧いても首領パッチに変わりはないので特に臆する事もなく、何かを叩く乾いた音が聞こえる長閑な中でボーボボは声を張り上げ呼び掛けた。
「頼も~~~~~~!!!!」
 待てども誰も出て来ず、ベーベベが気付いた。
「呼び鈴あるじゃねーか」
 門柱に取り付けられている真鍮製の懐古趣味なブザーを押すと少しして潜り戸から破天荒ではなくコパッチが出て来たので、破天荒は居ないのかとボーボボは訊ね、ベーベベは初めて見る形状のナマモノを興味深く観察した。
「破天荒なら裏で薪を割ってますよ」
 コパッチからすればボーボボはおやびんを帽子にした怨みがあるが、ボーボボはおやびんの仲間でおやびんが同格と認めているので丁寧に答え、金持ちそうな立派な庭を通って裏庭に案内をされると破天荒が確かに薪を割っていた。
「おい、破天荒。お前に客だぞ」
 オレンジ色の半袖Tシャツ姿で斧を手にした破天荒が振り返り、コパッチに返事をした。
「ヘイ、コパッチアニキ。ありがとうございます」
 半信半疑でここまで来たベーベベは本当に破天荒がいて家の用事をこなしている姿から本当にハジケ組に入っている事が判明して驚き、そしてあの小さなナマモノに敬語を使っている事に更に驚いた。
「お前、あんなのに偉そうにされてんのか!?」
「ここじゃオレは一番下っ端ですから。こんな所までどうしたんですか、ベーベベさん、それにボーボボも」

更新日:2019-02-01 06:42:15

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