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「翔ちゃんに、何かされた?」

腕を枕にしていた俺は、まあくんを横目で見る。
眠れないまま来た講義は、子守唄。
それに必死に耐えて、起きていた俺を褒めてほしい。
やっと終わって、眠りにつこうとした俺を起こしたのは、まあくん。
櫻井さんは大学を休んでいた。
大野さんも。
二人ともに、顔を合わせたくなかった俺は、ホッとしていた。
まあくんは、俺の頭を撫でた。

「それとも、おーちゃんに?」

「なんでそう思うんだよ」

「ニノがヘコんでるって、おーちゃん絡みでしょ?」

「俺、ヘコんでる?」

「うん」

このまま撫でられてると、本当に寝てしまいそうだ。
俺は、まあくんの手を払った。

「ねぇ、まあくん。俺のこと、好き?」

「うん」

「即答?」

「好きじゃなきゃ、一緒にいないよ。それに」

まあくんは何故か、得意顔。

「ニノだって俺のこと、好きでしょ?」

「嫌い」

「ニノは自分が嫌いだと思ってる奴には、こんなふうに触らせないよ」

「嫌い」

「うんうん」

笑いながら言うな。
俺に触ろうとすんな。

「触んな」

俺は腕で顔を隠した。
まあくんは、また俺の頭を撫でた。

俺の気持ちを汲んでくれる、優しい、人。

心の中で感謝したのは、そこまで。
訳のわからない子守唄を聞かされて、皆の注目浴びて。
俺は慌てて、まあくんと一緒にそこから飛び出すハメになった。

更新日:2016-05-08 13:40:12

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