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第4話 : 1週間前② ~JJ side

1人になれる場所で心を落ち着けたくて、トイレに飛び込んだ。
個室に篭る腹積もりだったが、幸いトイレには他に誰もいなかった。
…洗面台の鏡に自分の顔を映してみる。
外で過ごす時間が長い割にはあまり日焼けしておらず、肌は綺麗なままだ。
周りにいる多くの若い兵士達が「かっこいい」「綺麗だ」と言ってくれるし、熱い視線を感じる事もある。
でも、誰よりも熱い視線で見つめて欲しいのは、今でもユノなんだ。
6年間、一度も会えなかったけれど、忘れた事はない。
だけどユノは?今も俺の事を想ってくれている?
6年ぶりにユノに会える今夜が、待ち遠しかったけれど、怖かった…。

トイレで鏡を眺めてなどいたら朝食に遅れそうになり、急いで食堂に向かった。
カウンターで朝食のトレーを受け取り、空いている席を探しに行こうとしていたら、誰かに後ろからポンと肩を叩かれた。
「…あ、兵長」
「一緒に食べましょう」
そう言うと、兵長は、既に確保していた自分の朝食のトレーを手に、さっさと俺を兵長以上の階級の人ばかりがいる席の方へ連れて行った。
「あの、この席はちょっと…」
「話がしたいから」
なんとも居心地悪く、少し奥まった席に、兵長と一緒に座った。

「最終予定表はもう見ましたか?」
「はい」
「びっくりしたでしょう?…メイン会場のMC」
「少し。…いえ、かなり」
「芸能界はどうでも、ここは軍なので…トップスターを2人も引っ張り出せるなら、それでOKなんです」
「…はあ」
「ただし、せっかく引っ張り出したトップスター同士の雰囲気が良くなかったら、これはダメだ。フェスティバル全体の雰囲気が悪くなる。それで、ホントのところお二人はどうなのかと思っていた時に、ジュンスと会う機会があって」
「ジュンスにですか?」
「そう。聞いてみましたよ。ジェジュンさんとユノさんは会っているのか、とか」
「ジュンスは何と?」
「何とも。でも彼は分かりやすいですね。彼を見て、大丈夫と思ったんです」
「…」
「ただ、開幕式は…ユノさんのMCでジェジュンさんが歌、と、そこまでやると事前に分かった場合、どんな事になるのかが予測出来ないので、混乱回避のため事務所やペンカフェにも極秘、と、そういう事です」
「…そうでしたか。いえ、良かったです。こういう事でもないと、ユノとはずっと会えないままだったかもしれないから」
「ちょっと強引だったかもしれませんが…。実は軍の中にもファンが多くて、それでこうなった、というのもあるんです。これで良かったなら…良かった」

兵長はそう言うと、いつの間にか空になっていたトレーを持って席を立った。
食堂を出て行く兵長の後ろ姿に、俺は「ありがとうございます」と、そっと呟いた…。

更新日:2015-10-30 21:49:49

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