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旅立ち

「おはよ、加藤。」
「おうっ。おはよう、明。眠れたか?」
「あぁ。よく眠れた。」
「とうとう出発だな。」
「あぁ…。」
「明?どうかしたのか?」
「いや…。何でもない…。」
和男…。見送りには来てくれないよね…。よけい辛くなっちゃうもんね…。
「朝食食べに行こうか?加藤。」
「大丈夫か?なんか元気ない…。」
「大丈夫だよ。食堂に行こう。」
「う、うん…。」
明、お前、菊田部長のこと考えていたんじゃないのか?寂しそうな顔していたぞ。暫くの間会えなくなるから。それで寂しそうな顔してたんじゃないのか?
「どうした?加藤。」
「いや、何でもない。とうとう出発するんだなって…な。」
「訓練航海だけで済むといいな。ドンパチはごめんだ。」
「やめろよ、明。お前の変な勘は当たるんだからさ。」
「悪い、悪い。」
「ひよっこと新人率いてドンパチなんて、考えただけでゾッとする。」
「俺もだよ。」
「いいな!明!変なこと考えるなよ?お前の変な勘はマジ当たるんだからさ。」
「了解。」
「食堂、行こう。」
「ヤマトの食堂で食べるの、久しぶりだなぁ。」
「あぁ…。久しぶりだ…。」
「あまり思い出したくないがな…。白色彗星との戦いは…。」
「そうだな…。」
「でも忘れちゃいけないんだ…。戦いで死んでいったヤツらのことは…。」
「あぁ。わかってるさ。」

食堂。
「お前さ、尾翼につけてるマーク、あれ何だ?」
「撃墜章。」
「マジかよ。」
「…。」
「明?」
「嘘…。」
「ん?」
「イスカンダルの旅や彗星帝国との戦いで死んでいった仲間の数…。これ以上増えないことを祈ってる…。」
「そうだったのか…。」
「ん…。」
「食べ終わったら、第1艦橋に顔出すか?明。」
「そうだな。卒業生が乗艦する前に話をしておくか、第1艦橋クルーと。」
「他の部署の卒業生の情報も知りたいしな♪」
「それ、必要か?」
「必要だろ?第1艦橋に配属されるヤツもいるだろうしさ。名前くらいは知っておかないとな。」
「名前ねぇ…。面倒だな。」
「お前って、ホント、名前覚えるの嫌がるよな。何で?」
「面倒くさいんだよ、ただ単に。」
「お前さ、隊長だったんだろ?いろんな部署の人達の名前くらい…あ…。すまん…。」
「…。」
「明…、ごめん…。」
「覚えたよ…。他の部署の人達の名前も…。保安部、管制…その他にも…。皆…死んでしまった…。」
「ごめん…。気が利かなくて…。本当にごめん。」

更新日:2015-11-28 14:24:05

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)