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「あぁ…。彼女の犠牲を無駄にしてはならない…。地球も…ヤマトも…。」
「うん…。」
「彼女がいなかったら…地球は侵略されていただろう。古代がヤマトで敵に突っ込んだところで、大したダメージは与えられなかったハズだ…。」
「え…?」
「古代は死ぬつもりだったそうだよ。ヤマトをミサイルと化して敵に突っ込んで自爆するつもりだったそうだ。」
「何で…そんなこと…知ってるの…?」
「俺、一応、幹部だからな。古代からの事情聴取の内容は全て知ってるよ。」
「そんなこと考えていたんだ…。」
「考え方は、お前と変わらないな。」
「うっ…。」
「自分の機体をミサイルと化して、敵艦載機射出口に突っ込んだ、お前と一緒だ。お前は奇跡的に救助されたがな。激突した衝撃で脱出装置が勝手に働いたのか…それとも、加藤の思いが通じたのか…わからんがな。」
「加藤の思い…。」
「自分も重傷だったのに、お前を救助しに行くと言った。明は生きているってね。」
「それは加藤から事情聴取したの?」
「あぁ。」
「そう…。」
「お前も本当は事情聴取しないといけないんだがな。ま、聞かなくても、お前の考えていることは大体わかるから、適当に報告書は作っておくよ。」
「うん…。任せるよ…和男に…。」
「あぁ…。」
「おやすみ、和男。」
「おやすみ、明。」
夜が明けて欲しくないな…。ずっとこのままで…。いつまでも傍にいて欲しい…。叶わぬ望みだがな…。
「ふっ…。もう眠ってる…。」
気持ち良さそうに寝息をたてて眠る明。
「お前は何歳になっても可愛いいな…。」
明の柔らかい髪を撫でる菊田。
「明…。」
頬を優しく撫でる。
「無理するなよ…。」
「う…ん…。山本…クリアフォー…。」
「フフッ。発進の夢か?」
可愛い、俺の明…。行ってしまうんだよな?俺を置いて…。
「ん…帰還…したよ…和男…。」
「明…。」
こんな愛おしい者を手離したくない…。行くな、明…。
「ムニャ…ムニャ…ただいま…。」
無事に帰って来いと言ったせいか?帰って来た夢を見てるようだ…。
「杖…。」
今度は自分だけで歩けるようになった夢か?
コロコロいろんな夢を見るヤツだな。
「和男…。」
俺の夢?
「離れたく…ない…。」
「明…。」
「ずっと…一緒…。」
「あぁ。ずっと一緒にいるよ。お前の一生を背負うつもりでいるからな。」
「ん…。一緒…。」
安心しろ。お前は俺のモノだからな。
「和男…。」
菊田は明を抱きしめた。

更新日:2015-11-22 23:34:35

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)