「明日、乗艦か…。」
寂しそうに菊田が呟いた。
「準備はできているのか？明。」
「うん。大丈夫。」
「行かせたくないな…。」
「何か言った？」
「いや、何も。」
「少しの間、お別れだね…。」
「そうそうことを言うな…。」
「和男…。」
明は菊田に近づくと、杖を外し、抱きついた。
「大好き…。愛してるよ…。」
「明…。」
少し戸惑う菊田。
「明日、行ってしまうのにか？」
「どこにいても、和男を想う…。愛するよ？」
「大人みたいなこと言いやがって…。」
「僕はもう大人だよ？」
「22歳か…。」
実働訓練で７４３部隊にきたとき、17歳だったのに。もう22歳か…。月日が経つのは早いもんだ…。
「どうしたの？」
「別に。何でもない。」
「僕がヤマトに乗艦するのが気に入らない？」
「いや…別に。」
「気に入らないんでしょ…？」
「別に…。」
「和男の別にはYESって意味だよね。」
「ふん…。明日、パトリックとご対面か。」
「そうだった！楽しみだな。」
「楽しみか…。」
「ヤッパリ気に入らなくて怒ってる…。」
「出掛けてくる。なるべく早く帰るつもりではいる。」
「夕食の買い物しておくね。食べたい物ある？」
「唐揚げ。」
「うん！わかった！作って待ってるからね！」
「明…。」
「ん？」
「乗艦の前日まで、夕食の支度なんかしなくていいんだぞ？寿司でも出前取ればいい。」
「だって和男は唐揚げが食べたいんでしょ？だったら作るよ。」
「明…。」
「それに…今晩の夕食食べたら…しばらくお別れだから…。和男が食べたいものを…。」
「バカたれ。」
「…。」
「買い物、無理するなよ？タクシー使っても構わないんだから。」
「ギリギリまでリハビリしないとね？」
「もうここまできたら、リハビリはいいだろうが。ケガをすることの方が心配だよ。」
「ん…。ありがと…。」
「礼など…。とにかく行ってくる。買い物以外大人しくしてろよ？」
「はい。」
「明…。」
「ん？」
黙って口づけをする菊田。
「じゃあな。」
「いってらっしゃい、貴男…。」
「ふっ…。見送られるのも、まんざら悪くないな。」
「フフッ♪」


「よっ！菊田。明君は元気か？」
「尾形か。あぁ、明日ヤマトに乗艦する。」
「そこまで回復したか。」
「いや…。正直、乗艦させたくない。まだあの子の体は…ボロボロだよ…。」
「そうなのか？」
「この俺が、抱くことを躊躇するくらいだからな。」
「そっか…。」