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「明。無理をするんじゃないぞ?」
「菊田部長は僕に過保護ですね?」
「心配しているんだよ。」
「大丈夫。ちゃんと飛べるところ、見せますから。」
「あぁ。見せてもらうよ。」
「加藤。俺のコスモタイガーは?」
「コイツだよ。寂しがってたぜ?主がいなくてね。」
「ごめんな。放っておいて。今日からよろしくな?俺のコスモタイガー。」
「明。テスト飛行は1時間だけだ。いいな?」
「了解、菊田部長。1時間あれば十分だよ。コイツの性格を知るのにね。」
「行ってこい。」
「了解。山本、発進準備に入ります。」
「明!先に行くぜ!」
加藤が飛び立った。
「明、私も先に行きますよ。」
パットも飛び立った。
「山本機、クリアフォー、テイクオフ。」
明のコスモタイガーが飛んでいく。
それを菊田、姫川は見つめていた。
「お嬢のヤツ、もう大丈夫そうですね?菊田さん。」
「あぁ…。だが、また俺の傍から離れていく…。」
「だったら航空部部長権限でヤマトへの乗艦を阻止したらいかがです?」
「できるか、そんなこと。」
「手放したくなかったんでしょ?」
「姫さん!」
「冗談、冗談。立派になったもんだ。ガキだったお嬢が今じゃヤマトの副長だもんなぁ。ねぇ?菊田さん。」
「俺が育てた子だ。あれくらい飛べて当然だ。」
「秘蔵っ子ってヤツですかい?」
「まぁな。」
「743部隊に戻せば、いつでも会えたのに。」
「アイツの指揮する隊を見てみたかったんだよ。それだけの実力はつけたつもりだったからな。」
「大した自信ですねぇ。」
「俺の愛弟子だからな、明は。」
「ええ。アンタはお嬢を目の中に入れても痛くないほど可愛がっていた。康平やノリとは明らかに違っていた。」
「惚れてたからな、明に。訓練学校の2科生の時から。ずっと。」
「お嬢も、とんでもない人に目をつけられたもんだ。」
「ふふっ…。」
「理想の相手に出会えたわけですかい?」
「いや、理想の相手に育て上げたんだよ、明を。」
「なるほどね。アンタのやりそうなことだ。」
「俺の紫の上だからな。」
「紫の上?源氏物語ですかい?」
「あぁ。」
「物語同様、理想の相手に育て上げましたか…。」
「俺の宝物だよ。本当はもう危険な目にはあわせたくないんだがな。」
「権力使えばいいでしょうが。さっきも言ったけど。」
「ヤマトに乗るなとは流石に言えなかった…。副長でもあるしな…。」
「傍に置いて愛でた方が良かったんじゃないんですかい?」

更新日:2015-11-05 17:39:26

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)