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4日前

「和男。」
「ん?」
「あのさ、テスト飛行に参加したいんだけど?」
「はぁ?」
「一度位乗っておかないとさ。」
「抜錨まで回復に努める約束だろ?」
「一度でいい。乗せて欲しい。」
「明…。」
「皆の分…僕が飛ばなきゃ。見せてあげたいんだ。皆に。」
「無理をしたら、また悪化するぞ。」
「わかってる…。」
「だったら!」
「皆に見せてあげたいんだ。新コスモタイガーを。僕が…生きている姿を…。」
「ヤマトに乗艦してからでも構わないだろ?」
「ううん…。ヤマトに乗艦する前に見せたいんだ。僕は…もう大丈夫って…。」
「明…。」
「僕は…大丈夫だから…。真実を…受け入れるよ…。」
「明…。」
「眼帯…取るよ?」
「あぁ。」
眼帯を外す明。ゆっくりと目を開ける。
「どうだ?明。」
「何も見えない…。もう…何も…。」
「明…。良かった…。」
「後はこの足だけだね?」
「そうだが…。無理はするな。」
「わかってるよ。ちゃんと佐渡先生に言われた通りにするから。だから、お願い。テスト飛行させて?」
「しょうもないヤツだな。」
「加藤やパットとも会いたいし…。」
「今日だけだからな。抜錨まで回復に努めると、佐渡先生と約束しているんだ。」
「ありがとう…。」
「制服は預かってある。」
「ヤマトの制服…。皆にも着せてあげたかった…。」
「明…。」
「大丈夫。前を見るって決めたからね。」
「743部隊の基地まで送るよ。俺もお前が飛ぶところを見たいからな。」
「じゃ、早く朝御飯食べようよ。ね?」
「調子のいいヤツだ、全く!」


「加藤!」
「明?」
杖をつきながら加藤に近づく明。
「明、大丈夫なのか?」
「うん。テスト飛行に参加することになった。今日だけなんだけどね?」
「今日だけ?」
「佐渡先生から抜錨まで回復に努めるよう言われてるんだ。でも、菊田部長に頼んで今日だけ参加を許可してもらったんだよ。」
「そっか…。」
「皆にね、見せたいんだ。新コスモタイガーを。俺が…生きている姿を…。」
「あけの海基地…全滅だってな…。悔しいよ…。共に訓練をしあった仲間だから…。生きていたら…一緒にヤマトに乗艦できたはずなのに…。」
「皆の思いを背負ってテスト飛行するよ。」
「本当に大丈夫なのか?」
「もちろん!」
「明!」
「パット!」
「体は大丈夫なのですか?」
「うん。大丈夫。」
「明と飛べるなんてhappyです。」
「ありがと。パット。」

更新日:2015-11-04 23:18:25

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)