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5日前

菊田のマンション。椅子に座り、ボーッとしている明。
「明?」
「…。」
聞こえていないのか?
「明!」
ビクッとする明。
ゆっくりと菊田の方に顔を向けた。
「良かった。聞こえなくなったのかと思ったよ。」
「…。」
「朝飯の支度できたぞ。」
「…。」
あけの海基地の映像を見たのがショックだったか…。何も喋らなくなってしまった。
「おいで。」
「…。」
「今日の朝飯はハムエッグにしてみたんだ。」
「…。」
「感想もなしか?」
「美味しそうだね…。」
「明、お前、月の映像見てショックを受けているんだろう…?」
「別に…ショックなんか…。」
「やめとくか?ヤマトへの乗艦。俺の権限で、副長はまだ体が回復していないという理由で不参加にできるぞ?」
「大丈夫だよ…多分…。」
「明…。」
「何で…。」
「ん?」
「何で、あけの海基地だったんだろう…。」
「明…。それは誰にも答えられないよ…。」
「…。」
「ほら、サッサと食えよ。今日はどうするんだ?また港へ行くのか?」
「そうだね…。」
「あ、パトリックが今日からテスト飛行に参加する。見に行ったらどうだ?ヤツの飛行が見られるぞ。」
「パットが…?」
「コスモタイガーで、どんな飛行を見せてくれるのか、興味ないか?」
「…。」
「明?」
「姫さんのとこ、行ってくる…。」
「そっか…。じゃ、テスト飛行も見てくるんだな?」
「見ない…。」
「ん?なぜだ?」
「見たくない。」
「どうしちゃったんだ?明。ヤマトへの乗艦をあんなに楽しみにしていたのに。」
「こんな体で乗艦できる!?」
「明…。」
「姫さんのとこ、行くだけ…。テスト飛行は見ない…。」
「パトリックにも会わないのか?」
「…。」
「そっか…。ま、姫さんに甘えてこい。」
「…。」
「743部隊の基地まで送るよ。俺も姫さんの顔を見たくなった。」
「そう…。」


「着いたぞ、明。」
杖をつき、エアカーから降りる明。
「行くぞ、明。」
守衛のところに行く菊田。
「幕僚監部航空部部長の菊田だ。連れと一緒に姫川一尉に面会に来た。」
「幕僚監部…。」
守衛は驚きの表情で慌てて姫川に連絡をとっていた。
暫くすると奥から姫川が現れた。
「菊田さん!」
「よっ!久しぶり。」
「どうしたんです?航空部部長が直々にこんなとこへ。」
「明、おいで。」
杖をつきながら明はゆっくり菊田に近寄った。
「お嬢。どうした?」
「…。」
「ちょっとあってね。」

更新日:2015-11-03 22:47:25

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)