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「明…。」
「出てっ!早坂さん!」
ポロポロと涙を零す明。
「どうして、出てくれないの…?」
「明…早坂は死んだんだよ…。」
「和男の携帯貸して!」
明は菊田の携帯を奪い取ると、再び早坂の番号にかけた。
『おかけになった番号は現在使われておりません。』
「早坂…さん…。」
(全く。お前は菊田のこととなると、別人だな?山本。)
(俺達、同期3人組を助けてくれ。)
(お前は、俺の可愛い息子みたいなものだからな。)
「嘘…。」
「早坂は…もう…この世には…いない…。」
「嘘だーっ!」
ベッドに倒れ込み、声を出して泣きじゃくる明。
「明…。今直ぐに早坂達の死を受け入れるのは無理だろう…。お前がしっかりと早坂達の死を受け入れることができるようになるまで、その眼帯は外すな。いいな?」
「もし、外したら?」
「早坂達が死んでいく姿の幻覚に苦しむだけだ。」
「何で?何でそんなものが見えるの?」
「お前がマーズノイドだからじゃないかな…。緋眼の持ち主だから…。」
「昔から嫌いだった…この左目。今はもっと嫌いだ!僕を苦しめる。見えないものが見えてしまう。」
「いつから…?今日急に始まったわけじゃないだろ?」
「よく…覚えて…いない…。でも、この緋眼のせいで、辛い思いはした…。だから…嫌い…。左目…。」
「早坂も…お前の部下も…皆…死んだんだよ?明。わかるか?」
「信じたくない…。」
「信じたくない気持ちはわかるが、事実は受け止めないと…。違うか?」
「本当は早坂さん達、地球にいるんでしょ?和男、ふざけてるんでしょ?」
「ふざけてなんかない。」
「どこかの病院で治療受けてるんでしょ?」
「いや…。」
「嘘つきの和男なんか大嫌い!」
「明…。お前、本当は理解しているんじゃないのか?早坂達のこと。」
「何のことかわからないよっ!」
「本当にわからないのか?」
「わからないよっ!和男は嘘つきだ!僕を苦しめる!」
「真実を言っているんだよ?明。」
「嘘だ!早坂さんが死んだなんて、嘘だよっ!」
「明…。」
全く受け入れることができないか…。このままじゃ、ヤマト乗艦は無理だ…。参ったな…。
「出掛けてくる。」
「明?どこへ行くつもりだ?」
「早坂さん達、探してくる。」
「明!なぜ理解できない?」
「早坂さんも真鍋達も生きてるよ!病院にいるんでしょ!探して回るよ!」
「無駄だ、明。早坂達は病院にはいない。どこにもいないんだよ…。敵の砲撃で…。」

更新日:2015-10-29 00:09:04

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)