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退院の日

「お世話になりました。」
「これでヤマトクルー全員退院じゃな。」
「佐渡先生も訓練航海に参加するんでしょ?」
「もちろんじゃ。」
「ヤマトで会いましょうね。」
「嬉しそうじゃな、山本。」
「はい。」
「先生、お世話になりました。無理を言ってすみません。」
菊田が頭を下げた。
「ま、ヤマトにはワシも乗艦するからの。山本のことは任せてくれて構わんよ。」
「よろしくお願いします。」
「じゃ、山本。ヤマトでな。」
「はい。抜錨は○月○日ですよね。」
「お前さんは抜錨まで菊田部長のところで体調を整えておきなさい。」
「え?だって他のクルーは乗艦しているんでしょ?」
「機関部などはな。波動エンジンの調整などあるようじゃよ。」
「航空隊だって新コスモタイガーのテスト飛行とかあるでしょ?」
「そうかもしれんが、お前さんは抜錨ギリギリまで養生せい。」
「そんなぁ…。」
「菊田部長。抜錨までよろしく頼みましたぞ。」
「ええ。私としては直ぐに乗艦させるつもりだったのですが…。」
「無理矢理退院を早めたんじゃ。抜錨まで回復に努めてもらいたいものじゃな。」
「わかりました。抜錨まで明の面倒は私がキッチリ見ますから、ご安心下さい。」
「いいな?山本。」
「はぁ〜い…。」
「こら!明!先生に向かって何だ?その返事の仕方は。」
「ごめんなさい…。」
「では。」
杖をつきながら歩く明。その姿は痛々しかった。

「大丈夫か?明。」
「うん。平気。」
「抱いてやろうか?」
「自分で歩く。これもリハビリだから。」
「やはり無理だったかな?訓練航海への参加は。」
「大丈夫だよ。」
「心配だ。」
「僕なら平気。心配しないで。」
「抜錨ギリギリまで回復に努めるよう言われたからな。1週間、俺の言うことを聞いてもらうぞ。」
「直ぐに乗艦したかったのに…。」
「佐渡先生からのお達しだ。抜錨ギリギリまでリハビリだ。」
「和男のリハビリってさ…。」
「何だ?」
「何でもない。」
「何だよ?」
「セックスができる=全快でしょ?」
「そう思わないか?」
「まぁ…。」
「その体じゃ、まだ抱けないな…。」
「もう大丈夫だよ。」
「何だ?抱いて欲しいのか?」
「うん…。」
「お前から言うとはな。」
「あの時言ったでしょ?退院の日に抱いてくれてもいいんだよ?って…。」
「言ったなぁ。でも、直ぐ乗艦の準備をしなきゃいけないからって、訓練航海から帰って来るまでお預けと言ったっけな。」

更新日:2015-10-13 02:09:41

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旅立ちまでの一瞬(ひととき)