• 68 / 504 ページ

三者三様 そのニ

一方、こちら東都大学理工学部の教室の片隅では────
黒羽快斗と宮野志保が一週間後に迫ったハロウィンパーティーの件で揉めていた。

すべての講義はすでに終わっており、教室内には黒羽と志保の二人だけが残っている。

二人は講義後そのまま教室に残り、隣同士に座ったまま話を続けていたのだ。

志保は会話をしている間も黒羽の顔を直視もせずに、ひたすらテキストに目を向けている。

「志保ちゃん、この通り頭を下げるから……
俺の顔を立てると思ってさ、コンテストに参加してくれよ」

黒羽が両手を合せて頼み込むポーズをすると、
志保がチラリと黒羽に視線を移す。

「イヤよ、そんなミスコンなんて絶対にお断りよ」

「でも、志保ちゃん、これ、見てみろよ。
すでに100名近い推薦の署名が集まってるんだぜ。
みんな、志保ちゃんにミス東都になって欲しいんだよ」

コンテストの候補者になるには50名以上の推薦者の署名が必要だった。

黒羽快斗を発起人として理工学部の男子学生だけで、
宮野志保に対して百名ほどの推薦署名を集めていた。

「今年こそは理工学部からミス東都を誕生させたいという理工学部の連中の悲願なんだよ。
志保ちゃんなら絶対にミス東都になれるって!
だから、みんな期待してるんだよ。
志保ちゃん、俺の立場もわかってくれよ」

理工学部は他学部に比べると実験や研究などに忙しく、真面目な気質の学生も多くて、
どちらかと言えば地味な学部だ。

しかも圧倒的に女子の数が少ない。
普段はほとんどミスコンなどには縁がない。

しかし、今年は違う。

宮野志保という東都大学内でも一、ニを争うような美女が編入してきたのだ。
現に編入してきた当初から理工学部では志保は話題の的で……
密かに志保をマドンナと呼んで持て囃していた。

そんな訳で、是非この機会に今まで華やかなミスコンの舞台では、
日の目を見ることのなかった理工学部からミス東都を誕生させようと、
男子学生らで結束したのだ。

そして、宮野志保を推薦するリーダー兼説得役として選ばれたのが──
恋人だと噂の黒羽快斗だった。

黒羽も理工学部の有志達から話を持ちかけられて、面白そうだと乗ったまではいいのだが……
最大の難関はいかに当事者である宮野志保をその気にさせて、
ミスコンに出るように説得するかだった。

更新日:2018-03-19 23:46:00

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

Someday ~ 忘れないで 【コナンで新一×志保】