• 1 / 2 ページ

名もなき詩


ーYuno sideー


今年も残すとこ1ヶ月・・・。

そろそろ街の景色も、クリスマスのイルミネーションが賑わい始めた頃・・・

俺はアイツと出逢った。




俺の名前は《 チョン・ユンホ 》
至ってごく普通のサラリーマンだ。

俺の家族は、親父(オヤジ)だけで
さほど会話もない。
お袋は、俺が幼い頃にこの世を去っていたから母親ってものが良くわからない。

男二人だけの生活に華やかな物は無く、殺風景な家だけど特に不都合な事は無い。

仕事が忙しい俺にとっては、風呂に入って温かい布団に眠れる事が、唯一 安らげる場所になっていた。



ある日、仕事が思いのほか早く片付いた俺は学生時代に仲の良かった友人と20時に行きつけの居酒屋で飲む事になった。

『 店に行くには30分位時間あるな・・・。』

そんな事を思いながら、繁華街に向かってた俺は、ひと気が少ない路地裏で数人のやさぐれた男達に絡まれている人影を見かけた。


『 あまり関わりたくないが・・・(ふぅ~っ) 仕方ないか・・。』


こういう事が どうしようもなくほっとけない俺は、

「おい! 何処に行ってたんだよ~、時間に間に合わなくなるぞ!!」

・・・っと、周りにも聞こえるくらいの大きな声でつい嘘の言葉を並べた。


その声と様子で、辺り一帯がザワザワとざわめき始めたと同時に絡んでいた男達が、

「・・・チッ、調子こいてんじゃねぇぞ。ぁあっ!」

絡んでいた人影に向かって捨て台詞をはいて、その場を去っていった・・・。


道端に座り込んでいた人影が、小刻みに肩を震わせ殴られた時に付いた血の痕を口元に残したまま少しの笑みを称えながら微かに聞こえる声で 低く冷め切った声で静かに呟いた・・・。


「・・・ふっ・・・ばっかじゃねぇの・・・くくっ・・・」



『・・・なんだコイツ・・・絡まれてたのに・・・何笑ってんだ??』


『 ふぅ~っ』っと息を吐きながら、その人影は立ち上がった。俺と同じ位か少し高い位置で前髪が少し目にかかりながら、振り向いたそいつの目線と俺の目線が重なった。

少し愁いさを秘めた大きな瞳と真一文字に結ばれた口元には、どこか儚げで・・・どこかで翼を失くしてしまった天使のようで・・・

この時の俺は・・・ただただ その場所にたたずむ事しか出来なくて・・・

今にも暗闇に溶け込んでいきそうな・・・そんな姿を見ていた。




アイツとの出逢いは、こんな形から始まったんだ。








更新日:2015-10-10 20:15:33

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook