• 14 / 23 ページ

それはまーくんと暮らし始めてから、一年くらい経った頃だった。
風呂から上がったら、まーくんは俺の背中に抱きついてきた。

「ニノー、好き」

「はいはい」

手には缶ビールを持っていたから、また酔ってるんだろう。
まーくんは酔うといつも俺に、好き好き言うから。
いつしかそれは慣習みたいになってて。
俺は少しの痛みに耐えながら、笑ってあしらう。

「ニノー……ベッド、連れてって」

俺は違和感を覚える。
何かがひっかかった。

「まーくん?」

まーくんを見るも、顔が赤い、ただの酔っ払いだ。

「早く」

甘えるような声に、俺はまーくんから缶を取りあげた。
すごく軽い。

「カラじゃん」

「うふふ」

俺はテーブルにそれを置いて、まーくんを背中に背負いながら、ズルズルと寝室に向かう。
まーくんの部屋のドアを開けて、ベッドにまーくんを下ろそうとした。
でもまーくんは俺を離してくれなくて。
俺は引きずられるように、まーくんのベッドに乗った。

「もう、まーくん?」

抗議しようとした俺は、まーくんの顔が思った以上に近くてびっくりする。
そして真剣な、まーくんの顔。
あなた、酔ってたんじゃないの?

「ま、まーくん?」

「ニノ、好き」

ズキン。
真剣な顔で言われると、ちょっとクルものがある。
それでも俺は親友を続ける。

「わかりましたから」

「わかってない!」

声を荒げるまーくんに、本気を感じ取って俺は戸惑う。

「まーくん?」

「教えてあげる。俺がどんなに、ニノが好きか」

まーくんの顔が近づいてくる。
俺は両手でまーくんの顔を押しかえす。

「何する気だよ」

それでもまーくんは、力まかせに俺に近づいてくる。

「キスに決まってるじゃん」

「いらねぇよ」

んんんー、て声出して、力入れて。
本気なの?まーくん。
まーくんは起き上がった。
マウントポジション。
思った時には俺は両手を掴まれていた。
まーくんの顔が近づいてくるから、俺は横を向いた。

「ニノ、こっち向いて」

まーくんの怒った声。
でも俺はまーくんを見ない。

更新日:2015-11-01 23:00:56

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

ディスコスターさまの付き人の秘め事