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ここは通称【吸血鬼村】。
少々、普通の人間とは違った能力を持つ者らが、集まって暮らす場所だ。

私と、同じ血を引く者たち。
その血の濃さはそれぞれだが、比較的能力を強く発現させた者らが、心穏やかに老いを迎える為に選ぶのが、ここだ。

実に平和な話なのだが…
生憎、この世では、こうした異能は嫌われる。いや、この世界に限った話ではないが。
結果どうなるかというと、【普通】と称する多数派によって排斥されることになる。

その行動の1つが、【魔女狩り】だ。

全面的に人間たちが悪いとは言わない。
確かに私たちの血は不安定で、時に暴走を引き起こす…それは、身を以て知っている。
けれど、多数派の暴力は、必ずと言っていいほど無辜の同族に向かってまで振るわれる。

この場所が、そうした被害に遭わずに済んできたのは、半分は幸運、もう半分は…

領主一族こそが、吸血鬼だからだ。

無論、人間側の法規に従って、領地を治めている。
太古の王のように、人間を支配しようだとかってのは、タチの悪い御伽噺の中に残るばかりだ。

それを何で長々と話さにゃならんかというと、だ。
つまり、とうとうこの地に矛先が向けられたということだ。

もっとも、そこらの村の悪ガキどもの、ごっこ遊びに過ぎないが。
それにしても、度を超えるにも程がある。

少々、灸を据える必要があるかもしれんな。

更新日:2023-04-01 00:27:10

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