• 3 / 57 ページ
気が狂いそうな軋りの渦からハッと目覚める…暗い天井が視界に広がる。

ここは、兄の統べる城の一角にある、私自身の居室に違いない。
夜は白み始めたばかりで、未だ静けさが支配している…どうやら、夢だったらしい。

大した内容ではない…まるで、祭りの際に演じられる子ども劇のような夢。
だが、寝覚めは悪く、これは悪夢の部類と言えそうだ。

サイドチェストに置いた水差しの水をグラスに注ぎ、一気に飲み干す…乾いた喉は潤えど、気分は晴れない。

奇妙に、印象に残る夢だった。
まるでどこかの創世神話のような…簡略化され過ぎて、何処か辻褄の合っていないような不可解さのある物語。
そのせいだろうか、どうにも結末が…いや、かき消された台詞が、気になって仕方ない。

暫しグラスを眺めて思いに耽っていたが、不意に気づいた。

「馬鹿馬鹿しい…夢じゃないか」

そう、夢だ。
とりとめのない夢に、大団円など見込めよう筈もない。

もう1度眠ろう。そして、忘れてしまえばいい。

そう思い切ろうとするも、目を閉じると、あの軋りが、耳の奥にこびりついたかのように蘇る。
何かを、思い出せとでもいうように。

…いつしか再び眠りに落ちても、その音は、遠くで響き続けていた。

更新日:2022-11-12 19:32:15

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook